『レオン、わたし赤ちゃんが出来たんだ』

朝。今日の名前のモーニングコールで、衝撃の事実が発覚した。

「妊娠…したのか…?」

驚きを隠せなかった俺は、もしかしたら声が震えていたかもしれない。あれほど避妊していた筈なのに、俺もツメが甘かったのだろうか。血の気が引いていく気がした。…名前の両親にどんな顔して会えばいい。

『なんてね、レオン…』

「また夜連絡する」

俺は通話を切り、ポケットに携帯を突っ込んで頭をおさえた。のんびりしてる場合じゃなかったな。とりあえず俺は名前の旦那になることと、一児の父親になる覚悟を決めなければ。これからは俺が、二人を養っていく。

「…仕事行くか」

あまりに急な報告で驚いたものの、かけがえのない俺たちの子供が身ごもったことは紛れもない事実だ。正直、嬉しい。今日は指輪を買って名前に会いに行こう。先ずはプロポーズ、近い日に両親に挨拶をして、。

そんなことばかり考えていたからか今日の仕事にはなかなか精が入らず、随分そわそわしていたらしい。帰り際にアシュリーに心配されたが、何でもないと返した。俺は帰宅路を辿りながら名前に連絡をし、近くのレストランで会う約束を取り付けた。通話を切り入ったことのないような女性ばかりが行き来するアクセサリーショップへと足を踏み入れ、名前に似合いそうな指輪をひとつ購入。俺は急いで名前の待つレストランへと車を走らせた。










「待ったか?」

「ううん、今きたところ」

「ならよかった」

「お仕事お疲れ様!それで、あのね、レオン。朝言ったこと実は…」

「あぁ、わかってる。名前、左手を出してくれ」

「へ……?」

きょとん、とまんまるくした目で小首を傾げながらも、名前はそっと左手をテーブルに乗せた。俺はその左手をそっと手に入れ取り、購入したばかりの指輪を薬指にはめる。そして驚きの隠せていない名前の目を見つめて。

「結婚しよう」

「…!!」

「名前も、お前のお腹の中にいる俺たちの子供も、必ず幸せにする」

「…あの、レオン、」

「近い内に名前の両親にも挨拶に行きたい」

「……っ、ごめんレオン!赤ちゃん出来たって嘘なの!」

「あぁ。………は?」

「きょ、今日実はエイプリルフールで…あの、ちょっといたずらしてみたくなっちゃって…。え、えへ…」

ごにょごにょと気まずそうに言葉を濁しながら視線を泳がせる名前の仕草に、俺は慌てて携帯を開く。液晶画面にははっきり“4/1”の文字。今まで張っていた気が全て抜けていく。

「全て嘘か」

「ごめっ…」

「まぁいい。だが俺の言ったことは嘘じゃない。返事を聞かせてくれ」

「……それ、は。もちろん嬉しい。結婚したい、レオンに幸せにしてほしい…」

「じゃぁ決まりだな」

「え?」

「この後ホテルに行くか」

「えっ?えっ?」

「嘘を吐いた罰だ」

「ば、罰…?」

「お仕置き。…否、嘘を本当にしてやるよ」










110401
嘘から広がる幸せの道

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