お似合いですね
- - - - - - - - - - - -

1ヶ月前の僕は、こんな幸せな未来なんて想像してもいなかったろう。
あの頃の僕は"幸せ"なんて知らないも同然だったしね。

心地の良い5月の風が、僕の頬を撫ぜる。どこまでも青い空は、まるで僕たちを写したように綺麗だ、なんて。

僕にはそんなクサい台詞、似合わないんだけどね。





ゴールデンウィークももう終わりだと思えば、なんとも短い休みだったと思う。
僕は群れが嫌いだから結局何処にも遊びなんて行かなかったけど、代わりに葵と応接室デートを楽しんだ(?)。
葵も文句ひとつ言わずに僕の仕事を手伝ってくれ、本当に助かった。

前の僕ならこんな事思わなかったよ。

そして意外にも、今まで五月蝿い奴だと感じていた葵は、実は結構女の子らしい性格だった事が判明した。
普通に恋バナが好きで、友達とよく話してたらしい。
勿論彼女は僕の事を話してたんだと聞いた。
・・・そしてその友達は、やっぱりというか、苦笑いして聞いていたらしい。

て、それはどうでもいいんだよ。いやどうでもよくないけど。この上なく嬉しいけど。

ただ、この状況を打開できる策があったら教えて欲しい。


『ん〜〜〜〜っ』
「・・・・・・・・・」

口元を緩ませ僕の腹に絡み付く葵。
現在地は屋上、する事も無いので2人で横になっていた時のこと。

あぶ、ない。非常に、危ない。

『ん・・・雲雀さん・・・』

ちょっと待ったァァァ!えろい!!えろいよ葵!
どう対処しろと・・・!僕は内心叫びまくる。

すると、また葵が動き出した。
トロンとした目をしながら僕に擦り寄っていた彼女は、急に上に上がってきたかと思うと、他の景色が見えないくらい近づいてきた。
目は、そのまま閉じるかのように――


『おめでとうございますっ!!』

「・・・は?」

ぎゅむ!!と彼女の、むむむむ胸に顔を押し付ける形になる僕。
僕がやってるんじゃないよ、葵が勝手にやってる事であって僕は・・・!!

って、はてな。

「おめでとうって、何だい」
『え?自分の記念日も忘れちゃうんですか?』

はぁ?と本当に頭上に疑問符をつける僕に、葵は少し呆れた顔をした。

何でそんな顔するのさ。ムッとする僕。


『だって、今日は5月5日ですよ?』
「・・・だから?」
『・・・誕生日・・・・・・』

「あ」

思い出した。そういえば僕の誕生日は5月5日・・・今日だった。
すっかり忘れていた僕は、思いも寄らない葵の言葉に少し愕然とする。

「なんで葵が知っているの」
『風紀委員の方に聞いたんですよ』

確か、クサカベって言ってましたっけ。葵の答えに、僕は納得した。
草壁は後で褒めてあげるとしよう。ウザかったら咬み殺すけどね。

「それで、おめでとうか・・・」
『はいっ!』

ニッコリ笑いながら言う葵、それは反則じゃないかい?
笑顔が素敵っていう言葉は彼女にピッタリだよ。

「じゃあ、僕の誕生日なんだし、」

プレゼントは無いの。と僕が聞くと、葵は悪戯っぽい表情で
『目を瞑っててください』
と言った。可愛すぎるよ。

ん、と返事をして目を瞑った僕。瞼の向こうで葵が何か、ごそごそとやっているのが聞こえる。
まだか、まだかと待っていると、『行きますよー』の声。うん、ドーンと来なよ。



ちゅ。



「・・・それがプレゼントかい?」
『はい』
顔が赤い葵。まだ開けちゃ駄目ですッとかいう声を無視して目を開ければ、やはり葵のドアップ。
我が彼女ながら可愛いな、と思い、僕は不服そうな顔を演じてみた(←)。

「足りないよ」
『え、』

ぐいっ、と葵の腕を引っ張り、自分の胸の中に収める。
あ、丁度いい。
抱き枕に最適かな、と僕は明日からの昼寝の仕方について軽く見当をつけた。

『あっ、あの・・・!』
「・・・・・・」


そして僕はそのまま、真っ赤な彼女の唇にキスをした。




お似合いですね
(当たり前な日常)






『んっ、――』


篭った声も、潤んだ瞳も、
全部全部、これから先ずっと


愛してる。



完全完結、とまでは行きませんが
これでまあ終わりですかね^^w
初めての中篇だったんですが、
それなりには出来たと思います。
長い間(?)お付き合い頂きありがとうございます!!
そしてこれからもよろしくお願いします!!



2010/4.27(火) 完結
驟雨

- - - - - - - - - - - -
< 7/8 >
もどる | TOP | すすむ

「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -