驚いたよ。 君の居ない日がこんなに苦痛だなんて、思いもしなかった。 あおいはる 「・・・・・・」 スス、と静かにお茶を啜る僕。 寂しいとか、そんな事思った事もない僕は今の状況にかなり驚いているというか、なんと言うか・・・、 今でも葵の泣き顔が、鮮明に僕の脳裏に浮かび上がる。 その度に辛くなるのに、どうして僕はこんなにも彼女を思い出そうとするのか。 嗚呼、もう後悔ばかりだ。 3日前のあの日から仕事に手がつかない。 書類は間違えるし、サインに"葵"って書いてしまった事もあった。 不覚。 自分の名前まで間違えるとは、どんだけ彼女のことを考えてるんだ僕は、ってあの時は頭を抱えたな。 っと、もうまた回想に入っちゃったじゃないか。僕の馬鹿。 「・・・・・・ハァ」 「・・・(委員長・・・)」 草壁が僕の方を心配そうに見てる。 君、そんな顔しなくていいからさっさと仕事しなよ。僕が言えた事じゃないけど。 「・・・僕は屋上に行ってくるよ」 「(・・・)はっ!」 ちょっと草壁がむかついたけど、今は咬み殺す気になれないな。 全く、今までこんな事なかったのに。 またため息を吐きそうになる口を噤んで、屋上へ向かう階段へと歩いて行った。 * * * * * 屋上の扉の向こうから聞こえる話し声に、僕はぴたりと動きを止めた。 そういえば、今の時間は昼休みだったっけ。 でもあと数分で予鈴が鳴るからと、僕はここで待つ事にした。 ・・・不覚だけどね。 「ちょっと葵、アンタがそんな落ち込んでたら困るんだって」 「!」 葵、という言葉に反応する僕。 『だって、雲雀さん・・・絶対怒ってる』 「ハァ・・・あのさ、アンタから行動しないと何も始まんないのよ?そこんとこ分かってる?」 屋上で葵と一緒にいる女は、彼女に説教垂れてるらしい。それも、僕の事で。 葵は、僕の事を怒ってると・・・? 3日間音沙汰も無かった理由を、僕は垣間見た気がした。 『そうなんだけど、・・・』 「・・・葵、友達が怒ってたら、アンタなら何をする?」 『・・・・・・・・・謝る』 「じゃあ謝んなさいよ」 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 ハァ、とまた女がため息を吐いたのが分かった。 「もう予鈴鳴るから、行くわよ」 『・・・・・・・後で行く』 「・・・分かった。早く来なさいよ」 足音が聞こえる。 僕は咄嗟に扉の横へと避けた。 ガチャ、と扉が開く。 出てきたのは、沢田綱吉達と時々一緒にいる黒髪の女(確か、黒川花っていったっけ)。 黒川は開けてすぐ見える所にいた僕を見て一瞬驚いた顔をしたが、すぐにドアを閉めて僕に向き直った。 「あの子、貴方に謝るのを凄く遠慮してるので、」 貴方から言ってみてください。と言った黒川はとても真剣な顔をしていた。 「・・・君に言われるまでもないよ」 そう返した僕を、これまた驚いた顔で見たあと、黒川は「失礼します」と言って教室に帰っていった。 黒川にはああ言ってしまったが、彼女にどう謝ればいいのか。全くの疑問だった。 生まれてこの方マトモに謝った事も無かった僕が、今更彼女に謝るなんて、僕にはとても難しく感じる。 とにかく、彼女に会わないと。 そう思った僕は、ドアノブに手をかけた。 ら、 ガチャ 「あ」 『え』 なんか、向こうから開いた。 修復して元通り (まずい、どうすればいいんだ) 「・・・・・・・・・」 『・・・・・・・・・』 沈黙って、こんなに痛かったっけ。 END ヒロインを"彼女"呼ばわりし始める雲雀さん |