03 ブラックモア・ライク 

私が森の中で拾われて早くも10年が経った。
拾った男の名前はブラックモア・ライクというらしい。無駄に格好良い名前だ。
私は拾われた身なので、彼の姓を名乗る事になったのだが、「ブラックモア」なんて自分に合いすぎて怖いとさえ思った(二つ名が黒猫だったから)。

自分でも年齢は分からないので定かではないが、恐らく当時の私の年齢は10歳ぐらいだったはずだ。
なので今の私の歳は20歳。若返る前は18だったので、実に28年も生きている事になる。
ライクの歳は今年で28だから、同い年な訳だ。かなり違和感あるけど。

ここで10年も暮らせば分かるものだが、どうやらここは異世界らしい。
というのは、随分前にライクに見せられた世界地図が、若返る前の私の知っているものとは全く異なるものだったから、という理由だ。
…だって、東の海だの南の海だの、私の知っている"地球"では気候的にありえない。この世界は球体じゃないのだろうか。
しかもその中でも特に異質な"偉大なる航路"なんて散々だ。島ひとつひとつに磁場を持ち、最果ての地にたどり着いた集団は海賊王の一味だけだとか、海王類とかいう恐ろしくデカい魚類がいるとか…人間がどうやって文明を開化させていったのかが謎である。

しかも私のいるこの島は、かのグランドラインの入り口付近にあるそうだ(ちなみに私はその話を聞いたとたん気絶寸前まで追い込まれた)。

そしてライクと共に住むこの小屋は、島の中心部から少し離れた場所にある。ライクは海が好きだからこの場所に建てたらしいが、中心部には街があるので、そんなに遠くには作れなかったそうだ。

私がライクと共に住むに当たって、義務付けられた仕事は"街へのおつかい"。
ライクは人と接するのがあまり得意じゃないらしく、それも大人数となるとどもってしまうらしい。
ので、街にはあまり出かけたくなかったから私が代わりにおつかいに行く、という訳だ。

本人はというと基本的に家事を担当していた。男なのに料理が上手いのは何年も一人暮らしをしていたかららしい。あとは生活費の為に、森や海に出て食べ物を採って来る。それを街に売りに行くのが私の仕事でもある。

「ヒスイ」

リビングのソファでくつろいでいると、外から帰ってきたライクが声をかけた。

「今日もたくさん採れたよ。今から売りに行ってもらえる?」
「分かった」
私はソファから立ち上がり、ライクから今日の収穫を受け取った。


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