02 若返りの魔法 

ここは何処だろうか。それが私の最初の疑問だった。辺りは木々で覆いつくされ、私が"殺された"場所とは似ても似つかない事が良く分かる。
チュンチュンと小鳥が囀り、サワサワと揺れる葉からの木漏れ日に照らされる若葉。…のどかだ。

私は暫くそこでジッとしている他なかった。もちろん困惑の意もあるが、自然の美しさに圧倒されたのだ。今まで機会はあっても、その機会に甘んじる事なく時が過ぎ去ってしまっていたから。

ハッとしたのはそれからどれだけ時間のたった頃だろうか。私は自分の姿を確認すべく、体中を弄った。
まず、身に纏っているのは真っ白なワンピースであること。髪は首ほどのパッツン。大切にしていた風のリングはチェーンに繋がれ、首にかかっていた。足は裸だ。唇が乾いているから、随分長い間ここに居たのだろう。

ふと、唇を触る自身の指を見た。…小さい。良く見れば足も、立って確認しなければ分からぬ身長も、元の自分よりはるかに小さい。――こんな摩訶不思議な事があるだろうか。

混乱が脳内を支配する中。ようやくワンピースのポケットの中の存在に気がついた。リングだ。
ジャラジャラと音を立てるリング達。それらは全て私のスーツの中に入っていたものだった。

何故こんな所に?ここはどこ?私のスーツは?様々な疑問が飛び交う。――あの男は?

すると、どこからか足音が聞こえてきた。分からない事だらけの私にとってはそれは恐怖でしかない。
誰!?何なの!?と私は頭を抱えて蹲った。

「――…君は、」
足音がやむと同時に、聞こえた声。恐る恐る振り向くと、青年が居た。

「どうして、こんな所に…」

青年が言うが、私は人が居た事の安心でか、意識が無くなってゆくのを感じていた。暗殺者として、致命的だというのに。それだけ疲れていたのか、はたまた違う理由か。
どちらにしても、今目の前に居る青年は危険じゃないと判断したのだ。なぜなら彼も困惑した顔をしているし、何より。――自分の唯一愛する弟に似ていたからかもしれない。

「ちょっと!君、大丈夫かい――」

寝ちゃダメなのに。そうは思うも、私は重力に逆らう事無くそのままブラックアウトした。





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