01 黒の人物
薄暗い路地裏に影がひとつ。その持ち主は影と引けをとらないほど真っ黒な服装をしている。
かぶっている帽子に手を添えるその人物は、自身の唇をキュッときつく結び、力強く噛んでいるのか血が滲んでいた。
「………」
無言で歩き続け、さらに暗い場所へと入っていく。目的地は、この奥だ。
近づくにつれ、だんだんと人の気配を感じるようになった。黒の人物は注意深く様子を伺った。
「なあオイ、この見張りって何か意味あんのか?」
黒の人物の目線の先で男が言った。
「ボスがやれって言ってんだ。あるんだろうよ」
「にしたって、何で急に…。今までこんな事あったか?」
「さあな。仮にあったとしても、俺は当たった事ねえな」
「俺もだ」
男たちの会話から察するに、今までここに見張りがいたことはないらしい。では急に何故?その答えは簡単である。自分がココに来るというのがバレているのだ。
黒の人物は舌打ちをした。するのその音が微かに聞こえたのか、男の一人が「今何か言ったか?」と言った。
「いや、なんも言ってねえが…」
「そうか?…なら、いい」
その言葉を聞き、黒の人物は得物を構えた。
ジャキッ、と僅かな金属音を響かせるが、男たちは気づかない。
二丁の銃を脳天に定める。そして、迷うことなく引き金を引いた。
―――…パァン!パァン!
銃撃音が響いたと同時に、二人の男だったものが倒れた。直後、男たちの守っていた建物の中から慌しい音が聞こえてきた。
「まっすぐにやれ」
黒の人物はそう言いながら、建物内から出てきた男の心臓をぶち抜く。
「余所見はするな」
次々と出てくる、標的の手下たちをどんどん撃ち殺していく。
帽子の下から覗く鋭い眼に迷いは無く、まっすぐに標的の姿を捉えていた。
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bkm