ぷよぷよ教教祖ユキノメカミ様3

そんなある日、僕は、ある事に気が付いた。
今は見渡す限りに人、人、人の波があるのだが、その中に嬉しそうではないのに、人一倍ニコニコと笑っている人がいるのだ。
この前は、四人だった。今日は、二人。
隣り合ってニコニコと笑っている二人は、若い男と女で、ぷよぷよさんではなかった。
僕が暗い部屋の天井ではなく、灰色の天を見上げていた時に来ていたようなボロボロの農作業用の服を着て、それでもなんだか気配が違う小奇麗な二人だった。
じ、とその二人を見ると、その方面にいた人たちがバタバタと倒れてしまう。
それに女はギョッとして、男につつかれて慌ててニコニコと笑顔を作り直す。

僕は、この凍った頬の下に笑顔を隠していたけれど、あの人たちは笑顔の下に何かを隠している。
そう思ったら、いてもたってもいられなくなり、僕は初めてこの高い場所ではっきりと身動きをした。
泣き声が響いていた部屋がいつの間にかシン、と静まり返っていて、その中でキラキラの石がこすれ合い、しゃらん、と肌をそわそわさせる透明な音だけが響いた。
つ、と指でその二人を指しただけだったけれど、ぷよぷよさん達はまた、おおう、おおうと涙を流して二人に向かってものすごい勢いで突撃をしていく。
あの人達、ぷよぷよさんに踏まれてしまうのでは、とヒヤリとしたが、そんな時に、パシン、と乾いた音が鳴り響いた。

「オラだぁ、オラがユキノメカミ様呼ばれたんだべさ!」
「・・・!ア、アタイよ!アタイがユキノメカミ様に呼ばれたんだから!」

二人はぎゃんぎゃんと言い争いをして、殴り合って、そして男が女をドン、とぷよぷよさんのほうに押し出して、みんな団子になって転げている間に、男は僕の方にダダダ、とものすごい勢いで駆け寄ってくる。
そうしてぷよぷよさんが止めるのも聞かずに柵を越え、高い階段を駆け上がり、僕の目の前にやってきた。

ぷよぷよさん以外の人を、こんなに近くで見るのは初めてだった。
遠くで見た時は女と同じくらいに小さかったのに、近くでみると、首を上げなくては顔が見えないほど背が高い。
ぷよぷよさん達は、ものすごい言葉をこの男に向かって吐きながら、必死に階段を上がってくる。

「・・・あっは、噂通り、もんのすごく綺麗な顔してるね」

男はさっき怒って、暴れまわって、女を殴ったとは思えない程に冷静な目で、僕を見下ろしてきた。

「アンタ、何が目的なのさ。せっかく戦国の世も落ち着いたってのに、こんな騒ぎ起こしてさ。・・・あの肥え太った信徒共を動かしてるのはアンタだろ?」

いくつの村がなくなって、どれだけの人が死んだと思う?
アンタのこれは、戦なんかじゃない。教えに従わなきゃ女、子供、関係なく足の指先から細切れにするなんて、本気なワケ?
・・・ねぇ、目的ぐらい、教えてくれたって、イイでしょ?
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