ぷよぷよ教教祖ユキノメカミ様2

それから、ずっと僕はぷよぷよさんと暮らしている。
といっても、なんだか僕はいつも真っ暗な所にいて、ご飯の時にしか光は照らないしぷよぷよさんには会えない。
僕がいる部屋は、本当に星の光一つさえもない真っ暗な部屋で、音だって自分が立てる音しかしない。
とてもつまらなかったけれど、僕にそんな事を強いているぷよぷよさんは僕の事が好きらしく、頬のぷよぷよに埋もれた小さな目を蝋燭の明かりできらきらと輝かせながらじっと僕を見つめてくるのはくすぐったいし、僕もじっとその目を見つめ返すと興奮して、唾を飛ばしながらたくさん色々なことを話してくれる。
僕がぷよぷよさんをぷよぷよさんと呼ぶのと同じで、ぷよぷよさん達は僕をユキノメカミと呼んでいた。
そして、僕がぷよぷよさん達をかわいい、かわいい、と思っているのと同じように、ぷよぷよさん達は僕を美しい、美しい、と言って、昔見たバッタのようにぴょこぴょこと頭を畳にこすり付けるのだ。

たまに僕は真っ暗な部屋から籠に乗せられて、妙に明るく、生ぬるい、おかしな匂いのする部屋に連れて行かれる。
その部屋の一番高いところにある座椅子に先のない足が痛まないように、そっと座らせられて、頭に、肩にとジャラジャラと重く、ぷよぷよさんの瞳のようにきらきら輝く石が付いたものを、たくさんたくさん乗せられる。
頭が重いなぁ、なんて思っているうちに、その部屋にはどんどんたくさんの人が入ってきて、一斉に僕を見ては涙を零したり、畳に額を擦りつけたり、挙句に幸せそうな笑顔を浮かべて倒れてしまった人までいる。
僕はそんな人たちが面白くて仕方ない。
僕は足こそは凍って取れてしまったけれど、頬の筋肉は取れずに凍ったままだったので、ははは、と笑ったつもりでもみんな気が付いていないくてほっとする。
それがまた面白い。ここにいるみんな、全員僕を見ているのに、僕が笑っている事に気が付かないのだ。
ぷよぷよさんに、楽しいね、と伝えようと顔を向けると、僕と目が合ったぷよぷよさんは、おおう、おおう、と大声を上げて泣いてしまった。
僕がびっくりしていると、ぷよぷよさんは大きな声で、ユキノメカミ様のご神託が下った!各地を回りユキノメカミ様の美しさを説き歩き、信徒を五倍にせよと!さすれば、この世はユキノメカミ様のものに!と何回も大声で怒鳴って、最後には口からぶくぶくと泡を吹いて倒れてしまった。
たくさん人がいるのにだれもぷよぷよさんには手を貸さず、みんな笑顔を浮かべておおう、おおう、と泣いている。
僕は倒れてしまったぷよぷよさんに手を伸ばしたけれど、椅子から転げてしまいそうになり、たくさんのぷよぷよさんがそんな僕を助けようとわらわらと集まってきて、倒れていたぷよぷよさんはみんなに踏まれてしまい、ぐちゃぐちゃとした、なんだかよくわからないものになってしまった。

それまで暗い部屋にいる時と、薄ぼんやりとした部屋にいる時の差は、ツーツー・トン・ツーツーツーツー・トンといったかんじだったのに、いつのまにかツー・トントントン・ツー・トン・ツー・トンといった感じになっている。
明るいところでたくさんの人を見るのは楽しいが、いかんせん頭も肩もジャラジャラのせいでとても重い。
あんなに疲れるのなら明るい部屋に行きたくない、と暗い部屋の隅までゴロゴロと転がって隠れるが、そんな事をすると僕を呼びにきたぷよぷよさんが、ユキノメカミ様が、あああ、とまた泡を吹いて倒れてしまうので、その声を聞きつけたぷよぷよさんが来る前に僕は慌ててまたゴロゴロと転がって布団に戻らなければいけない。
だんだんと、たくさんの人の泣き顔も、土下座も、気絶する姿もつまらなくなってきた。
僕が深く俯けば俯くたびに、ぷよぷよさんは慌てたようにどこかからかたくさん人を連れてくるようになり、いっそう明るい部屋に連れて行かれることは多くなるし、部屋に響く泣き声も大きくなる。
もう、ちょっとぐったりかもしれない。
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