くらい穴16

戦慄く身体からペニスを引き抜くと、小さな穴からぐぷりと精液が溢れ出てくる。
ヒクつく穴は初めての性交で真っ赤に腫れ、それが痛々しいと思うのに、佐助のペニスにはまた熱を持つ。

「みぃちゃん、きもちよかった?」

そっと耳元に問いかけるとシーツに顔を埋めたみつきは肩を揺らして小さな嗚咽を漏らす。
そんな弱った姿にも佐助は情け心よりも情欲を疼かせた。
最初は旦那が好意を抱いた相手になんとなく興味を持って、少しだけ悪戯をしてみようかと思っただけだったのに、ここまではまってしまうとは。

「あは、尻から俺様の垂れてきてるぜ?ちゃんと締めてナカに入れておいてよ・・・」

みつきの薄い背中の中心にゴツゴツと浮いている背骨を一つずつ指先でなぞり、震える尻たぶを撫でて精液を垂れ流す尻穴に指を入れようとすると、どこにそんな力が残っていたのかと思う勢いで、みつきはベッドから飛び降り、床に散った制服を掴むと保健室のドアに飛び掛る。
しかし、事前に佐助が鍵をかけていた為ぴくりともスライドしないそのドアに、みつきは癇癪を起こしたように力いっぱい拳を叩きつける。

「・・・っ、こんなっ、っく、だせ、出して、イヤだっ!もうこんなのイヤだぁ!」

会ってまもない男に身体を割り開かれ犯された。そう、自分は犯され、汚されたのだ。
しかも、その男は戦国時代の幸村の知り合いで、幸村を『旦那』なんて親しげに呼ぶのだ。
その声が、そう呼びかけられて当たり前のように振り替える幸村の態度が、自分の知らない長い年月の付き合いを垣間見せる二人の空気のすべてが、どれだけ自分を苛立たせていたのか、自分の心が読めるというこの男にはわかっていたのだろうか?分かっていたのに自分を犯したのだろうか?

「みぃちゃん、ほらほら落ち着きなって」

気配なくみつきの後ろに立った佐助は、真っ赤になった拳を痛ましそうに見て、震える薄い肩にそっと手を伸ばしたが、肩に触れた瞬間、「触るなっ!」と、叫び声に近い大声を張り上げて振り払われた。
まるで野良犬にでも襲われた子供のように、佐助から目を反らさずにじりじりとみつきは後ずさり、距離を取る。

なんと声をかけようか、と佐助が振り払われた手をそのままに考えていた時だった。

「・・・やっべ、旦那・・・」

佐助が小さく呟いて慌てたようにドアを振り返ると同時に、遠くドドドドと地鳴りが聞こえてくる。

「あ、あはー、・・・どうする、みぃちゃん?・・・この際旦那じゃなくてさ、俺様とそういうカンケイになっちゃうって、どう?」

佐助は何気なく自分の本心を伝えるが、みつきは幸村の足音が聞こえる扉の方をじっと向いたままこちらを見向きもしない。
「・・・聞いちゃいないし・・・。取りあえずさ、その股から垂れてるのとかちょとキレイにしとこうか。旦那には正直刺激強すぎだしー」と佐助が一歩みつきに近くと、その横をすり抜けてみつきはドアにすがりつこうと手を伸ばす。

「ゆきむ・・・」

みつきの言葉は最後まで続かず、口を「ら」の字に開けたまま、その姿が足下の穴に落ちてゆくのが妙にゆっくりと見えた。

足下に丸く、黒い穴が開いていた。
先ほどまでこんな落とし穴はなかったはずだ、といつかも同じ事を思ったのを思い出す。
激しい既視感を覚えながら佐助は地面を蹴り上げ、穴の中に消えかけている白く小さい手を掴もうと手を伸ばした。
瞬間。

「みつきっ!大丈夫でござるかっ?!」

鍵がかかっているのも関係なく、足音と同じようにけたたましくドアがスライドをした。
ドバァン、と激しい音を立て一度枠にぶつかり、その勢いでレールから外れ、吹き飛んだ先にはみつきの手を掴みかけている佐助がいた。

「はぁ?!何してんのだん・・・」

「な」という音を、口に出したのに自分の耳には聞こえなかった。
ああ、穴の中に落ちたのだ。
落ちる瞬間に見えたのは、しまった、という顔をした幸村が、しかし次にはこちらに手を伸ばし、迷いなく穴に飛び込もうと地を蹴リ上げたところまでだった。



落ちたはずなのに落下している気がしない。それどころか穴を見上げ、明かりを探そうとも、辺り一面真っ暗でどこが上かもわからない。
目を開けているのか、閉じているのか、立っているのか、落ちているのか。
何もかもあの時と同じ、自分がこちらに来た時と同じ状況だ。
きっと戦国の世に戻れる、と佐助は確信していた。
旦那とはぐれてしまったのが致命的だが、きっとすぐに会える気がする。
それに・・・、と佐助は右手に握った温もりを、ぎゅ、と強く握りしめる。

「俺様が守ってあげるからさ、」

とんだ事に巻き込んでしまったかもしれない。
あの平和な世界から、自分達の生きる戦国の乱世でこの子は何を思うのだろうか。
出来るだけ守ってやりたい。
佐助は薄れ行く意識の中、きつく指を絡ませた小さな手を引き寄せる。
先程あんなに自分を拒否した小柄な温もりは、既に気を失っているのかくたりと自分の腕の中に潜り込み、頬を寄せてくる。
そのまろやかな頬に唇を落とすと涙の名残か塩辛く、胸の奥がきゅうとなんとも言えない気分になった。

「・・・あっちに帰ったら、旦那に殴られてもいいから謝って、改めて、さ。きちんと順序を踏んで、オツキアイ、しよう、ね、」

次に目を開けたら自分はみつきを抱いて、どこに転がっているのだろうか。
出来る事ならこのまま布団の中がいい・・・、と間の抜けた事を考えたのを最後に、佐助の意識はぷつんと暖かなくらい穴に溶けていった。
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