くらい穴12

佐助はみつきの中に埋め込んだ指に、きゅう、と柔らかな肉が絡みついてくるのを心地よく感じていた。
堪えきれない喘ぎを漏らす口元からは、思い出したようにセンセイ、イヤ、ヤメテ、と否定の言葉がでてくるのだが、みつきの尻はがっちりと佐助の指を咥え込み、もっともっと、と小さく腰を降り始めている。

旦那も、この子自身も気付いていないが、みつきは淫蕩な人間だ。

屋根裏を移動中、学びやに似つかわしくない甘い声を耳にして、一体誰が何をしているのか、と好奇心に駆られて覗いてしまったのが良かったのか悪かったのか。
天井の板をそっとずらして伺った先には、まさか、と目を疑う光景があった。
直接みつきと会話をしたのは、初めに会った時くらいだった。
この子は自分を明らかに避けていたし、その理由もなんとなく分かっていたので自分も積極的には話しかけることをしなかった。
旦那と思いあっている真面目で潔癖で、ちょっと気難しい子、という印象しかもっていなかったみつきが、まさか誰がくるとも分からないこんな場所で、自慰に耽っているだなんて。

しかし驚愕から醒めると、その姿は自分の下腹部もじんわりと燻る程淫猥な光景だった。
いつもはツン、と澄ました顔をだらしなく緩ませて、小さな鼻声を漏らしながらマラを扱いている。
腰を前に突き出し、背もたれに首の後ろを乗せ、大股を開いて座っている席は旦那の席で、椅子に尻を擦り付けながら、天井にまで濡れた音響かせる程ぐちゅぐちゅと尻穴をほじり、唾液を零す口元には旦那の『たいいくぎ』の下穿きが咥えられていた。

「ゆきむら、ゆきむらのにおい、すごい、ア、はぅ、」

痙攣をするようにびくつく太腿の奥の後孔には指が4本めり込み、それぞれが中でてんでバラバラな動きをしているらしく、尻穴を捲れさせては赤い肉を覗かせている。
その内拳すら入ってしまうのではないか、と思った佐助は、心配や嫌悪よりも瞳の縁を熱くさせる、粘ついた欲情を感じた。

そう、旦那とこの子は思いあっている。
まるでおしどり夫婦のようにくっついて歩き、佐助にしか分からないのかもしれないが、幸村はもちろんの事、みつきもまっすぐ気味な口角を少し上げ、瞳をまぶしそうにそばめ、たまらなく幸せだ、という微笑を浮かべている。
佐助にとって入りがたい、陽だまりのような雰囲気を持った二人だった。
しかし、眼下にいるみつきはどうだろう。
夕暮れの教室の中、瞳を蕩けさせ、幸村の名を呼びながら口元に咥えていた下穿きを自分のマラに巻くと激しく扱き始める。

「ンーッ!アッ、アッ、ゆきむらっ、すき、すき、ゆきむら、ほしい、ゆきむらのほしい、ア、ちょうだい、ふといのっ、はやく、はや、くっ、ヒッ、ヒッ、アーッ!」

中を捏ねていた指はぢゅぼぢゅぼと先走りを泡立てながら激しく抜き差しされていた。
固く瞑った瞼の裏では、あの指は旦那のマラになっているのだろう。
痙攣するように震えていた腿のつま先が、ぎゅう、と丸くなった瞬間、カクカクと小刻みに振れていた腰がぐんっ、と前に突き出され、引き抜きしていた指が一際奥に突き立てられた。
そのまま、幾度か腰を前に突き出し、マラにまき付いた旦那の『たいそうぎ』に種付けをするように射精をすると、みつきは気だるげにそっと瞼を開いた。
先ほどまでの快感を引きずっている瞳には、罪悪感とそれを上回る薄暗い欲望が滾っていて、その瞳をちらりと幸村の机にやると、自分の精液で汚れた指でそこを何度も撫で、擦り付ける。
後日、授業中にそっとみつきの教室を覗き込むと、みつきが精液をなすりつけた机に幸村はつっぷして眠っていて、その斜め後ろの席のみつきは何事もないような顔をしてまっすぐ前を見ていたが、耳たぶが真っ赤に染まっていた。
その姿を見て佐助は天井裏で腹を抱えて必死に笑い声を押し殺していた。
見知らぬ戦のない世界、どこもかしこも清潔で直線で仕切られた白い建物、身に着けた誰もが同じかっちりとした『せいふく』、そのすべてに晦まされていた。
ああ、なんだ、この子もこちら側の子ではないか。
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