学園TS物語7


首に力が入らず、誰かの肩越しに、逆に写る視界の中、腰まで湯船に浸かったままの幸村が見えた。
真っ赤な顔を歪め、ジッとこちらを見ている視線と絡み合う。

『ゆき、むら、さん、』

もう、気まずさなど感じなかった。
蕩けたまことの瞳がうっすらと笑みを描き、唾液で濡れた唇を赤い舌でツウ、と舐め取っていく。
蠱惑的なまでのまことの表情に、幸村はいっそう顔を歪ませ、しかし視線を反らす事なくまことの痴態をただただジッと熱く見つめる。

「ぁ、ぁ、あっ、あっ、アッ、」

絡み合い、身体をくまなく舐めまわすような視線さえもたまらなく気持ちがいい。
幸村と視線を絡ませあったまま二人の手で乳首を、陰核を捻られ、まことは幾度目かの絶頂を迎えようと喉を震わせた。

「おい宝野、いつまで入って─」
「アーッ!アッ、ヒ、ひぅううっ!ハッ、ンッ、ンウゥ、うぅ・・・」

キュウ、と身体の奥が引き攣れる快感に、まことが全身を痙攣させたのと同時に、ピタリ、と身体中を這っていた手のひらが止まる。
絡ませあっていた幸村の視線が自分を通り越し、斜め後を見つめている。
その顔色は、先ほどまでは真っ赤だったのに、今は不思議と青白い。

「ぁふ、ひぁ、もっと、もっとなのぉ・・・、ゆきむあしゃん、しゃしゅけしゃ、ましゃむねしゃ、もっと、まこ、おんなのこだから、もっと、いっぱいえっちなコトするのぉ・・・」

自分から反れてしまった視線にも、止まってしまった手のひらにも、まことは身を揺すって抗議するが、しかし誰も動かず、何もしゃべろうとしない。
ピチャン、とどこかの蛇口から雫が垂れる音と、まことの鼻がかった鳴き声だけが反響する大浴場に、カララ・・・と乾いた音が響いた。

「・・・おめぇら・・・何してる・・・」

ビクリ、とまことの足を抱えている手が震える。

「あ、あはは、片倉のセンセ、いや、これは、ね、」
「Oh、こ、じゅうろう、その、な、」
「そ、某は、な、な、な、何も、」

まことが首を巡らせると、脱衣所から片倉先生がこちらを覗いていた。
先生、片倉先生だ。
まことはほう、と微笑み、片倉先生に向けて両手を広げる。

「・・・、宝野・・・」
「んぅ、ふふ、か、かたくらせんせ、まこ、まこ、わかったの。まこね、おんなのこなの。おんなのこだから、まこ、やらしいこといっぱいしても、だいじょうぶなの」

「わ、まこちゃん?!」「このばかっ!」「な、宝野殿っ!」
わいわいと急にうるさくなった周囲に構わずまことが満足げに頷いていると、耳が張り裂けんばかりの怒鳴り声が浴室に響いた。

「大丈夫な訳があるかッ!女だからこそ自分を大切にするんだろうがッ!」

「テメェら!外出ろ!外ッ!」という声と同時に身体を引き上げられ、まことは大きな怒鳴り声に目を回しながら、あの広い背中を持つ片倉先生の胸の中に抱き止められていた。
裸の身体が温かくて柔らかいもの、バスタオルに包まれ、まことは幸せな気持ちで気を飛ばしかけたが、ぎゅう、と痛い程に鼻を摘まれてハッと目を開ける。

「宝野、寝かせやしねぇぞ。おい、何満足げな顔してんだ。これからテメエは説教だ」

その低い声と、ぎゅうぎゅうと摘まれる鼻の痛みに、まことは蕩けていた頭の中がだんだんと冷え始め、これは一体どういう事になっているのか・・・とおそるおそる顔を上げる。

すぐそばにある、ほつれた前髪、眉間に深く寄った皺、ギラギラと怒りに満ちた鋭い瞳。

─片倉先生は、とても色っぽくて、かっこよくて、優しい─

そして、それと同時にとても厳しく、怖ろしい先生な事をやっと思い出したのだった。
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