学園TS物語1


まことが女の子になり、BASARA学園という不思議な学校に自室ごと転移してからもう数日が経っていた。
夢だ、僕は今夢を見ているんだ・・・と鏡の前で幾度目を擦っても頬を抓ってみても、たわわに揺れる胸はそのままで、ドアを開けてみればそこは相変わらず学園寮の廊下なのだった。

「はぁ・・・いつになったら戻るのかな・・・」

ピチャン、と以前よりも丸くなった気がする指先から雫を垂らして、まことは何度目かの深いため息を吐いた。
寮内の大浴場は広々としていて温泉のようで、いつもの自分だったら手足を伸ばしてうんと満喫しただろう。
しかし女の子となってしまった今、手足を伸ばしたらどうしても見慣れぬ膨らんだ胸元や淡く茂る下毛だけの下半身が眼に入ってしまい、一人だけの広い湯船でまことは身を縮こまらせてちょぽんと湯に浸かっていた。
大浴場は使用時間が決められているのだが、色々と心配してくれる寮監督の片倉先生に「宝野、風呂は開放時間の前か後に一人で入れ。いくらお前が男だと言ってもその格好じゃ皆と入れないって事くらい・・・分かるだろ」と低い声で断定口調に告げられて、その眉間に深い皺が出来ているのを見つめながら、まことはコクコクと頷く事しかできなかった。
でも、そんな一見怖ろしい片倉先生がとても優しい事をまことは知っている。
ただでさえそんな特別な待遇を受けているのだから、と一番風呂は避けて夜更けの最後の風呂に入っているのだが、そんなまことの為に片倉先生が湯船に浮いたごみや泡が飛び散った洗い場を掃除してくれているのを見てしまったのだ。
最初は時間が遅すぎたのか、もう片付の掃除をしているのだろうか、と思ったのだが、脱衣所であわあわ焦っているまことに気が付くと「オラ、何してんだ。早く入っちまえ」と苦笑をして、すれ違いざまにポン、と頭を撫でられた。
それからまことはその大きくて固い大人の手のひらを持つ片倉先生に、絶大な信頼を寄せている。

「今日もお風呂きれい・・・。先生にお礼言わなくちゃ・・・」

ちゃぷん、ちゃぷん、と揺れる心地の良い湯についつい固く縮めていた体がほぐれ、たゆん、と大きな胸が浮いてしまう。
それを慌てて両腕で隠しながら、そろそろ体を洗って外に出なければ、お風呂を閉める時間が遅くなると片倉先生に迷惑をかけてしまう、とまことはまた大きなため息を吐く。

女の子になってから困った事だらけだが、その中でも特に困った事の一つに『体を洗う』という行為がある。
自分の体だけれども、こんなに大きな胸を自分勝手に触っていいものかと思ってしまうし、それにもっと問題なのは下半身だ。
まことの特に困った事のもう一つに、なんでだかいつも下着が濡れている。というのがある。
慶次さんから借りたセーターを着てその服から香る匂いに照れていただけで、パンツの真ん中にじんわりとした染みができていた。
佐助さんや政宗さんにいやらしい事を言われてからかわれた時はまだしも、幸村さんと廊下ですれ違っただけで下着がじんわりと濡れたのには驚きを通り越して情けなくなってしまった。
最初は気づかぬ内に漏らしてしまったのか、とびっくりしたが、どうやら女の子になった自分の体は複雑で、直接身体に何かをしなくても些細な事ですぐに下着を汚してしまうようなのだ。
そう、自分はいつも下着を汚してしまっている。
ということは、下着を汚す何かが下半身から出ているのだ。

「ぅう・・・」

『ここ』を洗わなければいけないという事はわかっているのだが、『ここ』をどうやって、どこまで洗っていいのかまことには未だによくわかっていなかった。
いつもおざなりにタオルで擦って水で流すだけなのだが、しっかりと石鹸で洗ったほうがいいのか、その際はその汚れを出している『ナカ』まで洗うのだろうか。
ぶくぶく、と顎の下までお湯に浸かってしばし悩んだまことだったが、今日もいつもと同じでいいや・・・と心を決め、のろのろと湯船から上がろうと腰を上げた。

瞬間、ガラリ、と脱衣所に誰かが入ってきた音がしたのだ。
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