続・プチトリ!13


小十郎はずっと自分を熱く見つめる視線を感じていた。
あの丸く子ども子どもした頬を真っ赤に染め、潤んだ瞳を瞬かせるのは熱のせいだけではない。と断言できるほど、まことが自分にどういった感情を抱いているのかが丸分かりだった。
目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。ここまで気持ちが読める人間も珍しい。更にまこと自身の口が素直なせいもある。
自分に怯える顔、安心する顔、会話を楽しみ、悲しみ、そして口付けに陶酔する顔に、性を求める淫蕩な顔。
しかし、口でも、瞳でも、真っ直ぐに自分を欲しいと訴えかけてくるまことはまだまだ子どもだ。
それにこいつは風邪をひいている、体調が良くない、だから手を出してはいけない。
そう思い自分を諌めていたが、本当にそれだけだったのだろうか。

『小十郎さんだって、からだ、いっぱい熱いのに・・・』

自分の胸元に擦りつき、舌を伸ばしてきたまことは匂い立つ色気を纏わせていた。
どんどんと熱を帯び、焦点が危うくなる視線。
自分に絡み付こうとする、だぶついた服からのびる白い足、隣に立っているだけでも濃く鼻につくようになる淫猥な性臭。
己は以前のような屈辱を味わいたくない為に自分を優位に立たせようと、いたずらにまことを煽り、理性を崩そうとしていたのではないだろうか。
それだけではない、その理性を崩し、どんどんと乱れていくまことを見て、自分の嗜虐心を満足させていたのではないか。

『しゃわあ』の冷たい水が、まるで雨のように自分の火照った肌を叩く。
シャアシャアという涼しげな音の合間に、先程からずっと聞こえるあの蕩けた声はどうしたものだろうか。

「ハァ・・・あのスケベ坊主が・・・」

自分の名を呼び、自慰に耽っているのだろう。
呟いた声には呆れが含まれていたが、先程の一緒に風呂に入りたい、とどこかぼんやりとした瞳で服を脱ぎ始めた姿を思い出し、思わず苦笑が漏れる。
健気ではないか。
風呂から出たらその姿をからかって、そして身体に障らない程度にかわいがってやろう。
心地よいこの『しゃわあ』でも冷ませない熱を、まことに感じさせてやろう。

未だ聞こえるまことの喘ぎに苦笑を漏らし、濡れた前髪を上げた小十郎の顔は、しかし我知らず獣のように瞳をぎらつかせていた。


まことは一体何がどうなっているのか、何がなんだかまったく理解できず、ただ射精感が収まってしまったペニスを握り締め、呆然と風呂場に入ってくる小十郎を見上げるだけだった。

「こじゅろさ、・・・あ、なんで、なんでおふろ、」
「何言ってんだ。俺と一緒に入りたかったんだろう?」

笑いを含んだ声で低く囁かれ、それだけなのに下腹部の奥にツキンとした快感が走り、まことは小さく腰を揺らす。

「あ、や・・・やだぁ・・・」

そして大きく開いたままだった足を思い出し、慌てて閉じるとまた小十郎の低いいじわるな笑い声が降って来て、握ったペニスが嬉しそうに手の中で戦慄くのが恥ずかしい。恥ずかしくて、たまらなくいやらしい気持ちになってしまう。

「ぁ、んぅ、やぁ・・・」
「・・・なんだその顔は?あぁ?何がイヤなんだ?言ってみろ」

乱暴で意地悪な言葉遣いとは逆に、唇に伸ばされ溢れる唾液を拭う指先は優しい。
そのまま潤んだ瞳の縁を撫で、耳元をくすぐる手はひんやりとしていて火照った身体にこの上なく心地よいのだが、ほつれた前髪の間から覗く瞳は、じりじりとした熱い、まことの身体に火をつける色を灯していた。

「こ、こじゅうろうさ、まこ、まこのやらしいとこ、みちゃいやなの・・・」

ぷちゅ、と両手で握っているペニスから濡れた音が立つ。
じりじりと自分の瞳を覗き込んでいた小十郎の鋭い視線がチラリ、とそこに移ったのに、まるで視線がそのまま針先になってしまったのではないかという程の刺激をペニスの先に感じ、大きく声を漏らすと目を見開いてビクビクと背をしならせる。

「ッ、ヒ、あ、すご、ちくちくってするぅ・・・っ!っ、み、みちゃいやぁ、こじゅろさ、まこのこと、みないで、みないで、」
「ハッ、何を。さっきまであんなに見ろ、見ろ、と言ってただろうが。まさかあんなでかい声で喘いでおいて、聞こえてないと思ってたのか?・・・本当は、俺に、お前のいやらしい所全部、見ていて欲しいんだろう?」

熱の篭った低い声が耳朶から注ぎ込まれるのにまことはきゅうん、と喉を鳴らす。
そう、見ていて欲しかった、小十郎さんの目、すごくじんじんする視線をたくさん注いで欲しかった。
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