続・プチトリ!10


「ここがお風呂場です。これが湯船ですけど、お湯入れますか?こっちがシャワーって言って、水もお湯も出ます。水を浴びるだけなら・・・シャワーかな・・・?」
「悪いな。浴びるだけでいい・・・しゃわあ、か・・・どうやって使うんだ?」

まことは小十郎に風呂場を説明しながら自分の身体に篭る、風邪のせいだけではないもんもんとした熱を持て余していた。
そういえば、今は乾いているが寝ている間に下着も汚してしまっていた。
寝汗もたくさんかいたし自分もお風呂に入りたい。
一度そう思ったらどんどんとその気持ちは強くなっていく。
今すぐ入りたい。お風呂、入りたい。小十郎さんと一緒に入りたい。
小十郎と普通の話をしていても、どこか頭の奥のほうがぼんやりと、じんわりと、ぼやけているような気分だ。
風邪のせいもあるだろうが、すぐ隣に立つ小十郎の匂いやふと触れる身体の温もり、耳朶に響くゆっくりとした低い声が、ますます自分を惚けさせているのだとも確信していた。
もっとさっきのようなキスを小十郎さんとしたい。
もっともっとくっついていたい。

「ああ、だいたい分かった。それじゃあ早速、しゃわあとやらを借りるぞ」
「・・・はい」
「・・・・・・・・・・・・なんだ?まだ何か、・・・・・・おい、まこと、ちょっと待て、」

シャワーの使い方を一通り聞き終わり、袴の帯に手を伸ばそうとした小十郎が脱衣所から出て行こうとしない気配に不審そうに振り返ると、そこには下穿きを下ろしてだぼついた上着から足を覗かせ、下着に手を掛けようとしているまことが立っていた。

「まて、待て、なんでお前も脱ぐんだ。しかもなんで全部脱ぐ。おい、おい待て!」
「う、だって、だってお風呂、僕も、お風呂、」

まことは潤んだ瞳でジッと小十郎を見上げるが、前髪を掻き上げると呆れたような視線を返されてヒクリと肩を揺らす。
どうしてだろう。小十郎さんの身体もあんなに熱かったのに、あんなにいやらしいキスまでしたのに、小十郎さんの態度は至って普通で、さっきのキスは自分の妄想だったのではないかと不安になってしまう。

「風呂だからって下まで脱ぐか?」
「・・・小十郎さんの所は脱がないんですか?服、濡れちゃいます・・・」

「・・・風呂の入り方も違うのか」と小十郎はしゃがみ込むとまことの桃色の膝小僧をチラリと見やり、一つため息を吐いてから下穿きを上げてやる。

「お前が心配するのも分かるが、今一通り教わったろう?何も壊しやしないさ」

そう言って立ち上がり、くしゃり、と頭を撫でられ、まことは何も言えなくなってしまう。
暖かい手の平が置かれた頭を上げると優しく自分を見下ろす瞳と視線が合い、いやらしい事ばかり考えてぼんやりとしてしまっている自分が急に恥ずかしくなってくる。

「そういや随分寝汗をかいていたな。お前が先に入るか?」
「い、いえ、いいです!僕は、後で入ります!小十郎さん先どうぞ!」
「そうか?・・・悪いな。すぐに出るからちょっと待ってろよ」

そうしてまことが脱衣所から飛び出すと、後ろから小さな苦笑と帯を解く衣擦れの音が聞こえ、居ても立ってもいられない気分になり居間へと逃げ込んだ。

『恥ずかしい・・・!恥ずかしい!僕、なんで、あんな・・・!』

振り返った小十郎のギョッとした顔と呆れた視線を思い出し、まことは畳に倒れこむとその場でばたばたと手足をばたつかせる。
穴があったら入りたい、もしも今隣が断崖絶壁だったら迷わず飛び降りている程に恥ずかしくて消えてしまいたい。
しばらくそうしてもがいていたまことだったが、遠くから聞こえ始めた水音にホッと小さな吐息を吐くとそのままごろりと横になる。

「小十郎さん、どう思ったろう・・・」

驚いて、呆れてはいたが、怒ったり気持ち悪がられたりはしていなかった、ように思う。
お風呂から上がった小十郎さんと普通に顔を見て話が出来るだろうか・・・、と先程まで飲んでいた麦茶のグラスを見つめながら頭を抱えていたまことだったが、ふ、とこうなるきっかけになった出来事を思い出す。

そうだ、小十郎さんがキスをしてきたのだ。

前は口元に布が噛まされていたから、ちゃんとしたキスは出来なかった。
初めてのちゃんとしたキス。なのに、あんなにいやらしかった。
最初は優しかったのに、唇を擦り合わせるだけだったのに、気付くと舌を食べられていて、たくさん涎を垂らしてしまった。
指先で唇に触れると、皮膚とは違う感触のそこはカッカと火照っている。
小さく漏れる吐息も熱い。

「ン、」

小十郎さんからいやらしいキスをしてきたのに─。
チュ、と伸ばした指先を口の中に含むと、中の粘膜もいつもよりも熱かった。
この熱を小十郎さんも感じて、舌で舐めまわしたのだ、と思うとゾクリと背筋に電流が流れる。

「ふぁ、こ、じゅうろ、さん・・・こじゅうろうさんのいじわるぅ・・・」

そのまま口に含んだ指に吸い付きながら、もう片方の手はいつものように、二の腕で胸元を擦りながら下着の中へと潜り込ませていく。
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