プチトリ!7


小十郎はまことの目をじっと覗き込み、背後に立たずにこのままの体勢で背中に腕を回してくれ、と訴えかけているのだが、しかし膝の上の少年は頬を赤く染めぼんやりとした表情で小十郎の顔を見上げているだけだ。
舌打ちしたいような気分になりながら、どうしたんだ、しっかりしろ、と身体を揺らしてやると、ふるりと身体を一つ震わせてからゆるゆると体勢を整え、小十郎の背中に手を回す。
自分の胸倉に顔を埋めるようにした少年の表情は見えないが、腿に乗り上げ、向かい合って抱きつくようにぴったりと身体を合わせてくる身体は、その細い見た目に反して柔い肉を纏っている。
鼻先で揺れるふわふわとした髪からは花の香が漂い、男同士でこんなに密着するのは気持ちの良い事ではないが、このまことと名乗る少年の抱き心地の良さに少しは気が晴れる。
ふっふ、と小さく息を吐きながら、必死に身体を揺すって自分の縄を解こうと奮闘しているまことに、小十郎は警戒を許すことはなかったがそれでも少しだけ、眉間の皺と心の強張りを解く。
柱に括り付けられている自分の手元にはこの細く小さな腕だと回らないのかもしれない。
胸元で揺れる小さな頭に、この少年は一体何者なのだろうか、と幾度めかの考えが頭を過ぎるが、今は警戒よりも不思議さが勝っていた。
見たことのない服を着、髪からは花の香を漂わせ、白く、傷一つない指先には桜色の爪を綺麗に揃えている。
どこかいい所の貴族のようだ。松永の客なのだろうか。
それならば何故こんなところに現れ、そして武田の忍を知っているのか。
色々聞きたい事がある。
腕の縄が難しいのなら、まずは轡から解かせようと小十郎は胸元に凭れている頭を顎で小突く。

「ぁ、ぅ、っ・・・?なぁ、に?」

しかし、そのこそばゆい刺激に顔を上げたまことの表情に小十郎は驚愕する。
先程までの自分に怯え、涙を流していた子供のような顔とはまったく違う、情欲にまみれた淫蕩な表情がそこにはあった。
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