オシオキ8

尻穴から指を抜き、自分の下穿きに手をかけた幸村を見て、佐助はあらら、と苦笑を漏らした。
そこまでしてもいいものか、止めるべきか、それとも自分もおいしく楽しく参加してしまおうか、と思案していると、畳に落ちているまことの携帯電話がぶるぶると震えているのが見えた。
佐助の視力の良い目が背面についている液晶に、今一番見たくない人物の名前が表示されているのを見つけてしまう。

「あちゃー・・・。まこちゃん、前田の風来坊からでんわだ。・・・どうする?」

黙っていようかと思ったが、随分長い間震えている携帯に、温い尻穴から指を抜くと諦めたように手を伸ばす。
いきり立ったペニスをまことに宛がおうとしていた幸村もその言葉にピタリと動きを止め、眉間に皺を寄せて『けいじさん』と踊る液晶の名前を睨み付ける。

「けいじ、さん?・・・けいじさん・・・」

未だぼんやりとしているまことは、手渡された携帯を見ると嬉しげに名前を呟き、ピッと着信ボタンを押す。

『まこ?大丈夫か?あの二人に怒られちまったろ。なかなか出ないから心配したぜ』

慶次の心配そうな声が耳朶を震わせ、まことはくふん、と小さなため息を漏らす。

『・・・まこ?』
「んぅ、けいじさん、あのね、まこ、まこ、わるいこなの。はぅ、ん、まこ、やらしくて、わるいこだから、今、おしおきなの、」
『オシオキ?まこ・・・やらしいって、』

焦ったような慶次の声を出す携帯を耳に押し当てたまま、ぱっくりと開いてしまった尻穴に手を伸ばし、まことは自分の指をそっと差し込む。

「ふぁ、おしり、ぱくぱくしてるの・・・っ!けいじさんがいつもいっぱいいじるところ、まこのおしりのナカのエッチなところ、ふたりにぐりぐりってされて、いっぱいきもちよくて、でも、おしおきだから、がまんなの・・・」
『っ・・・、・・・・・・まこ、二人、いるんだろ?ちょっと代わってくれよ』
「ん・・・」

まことは大人しく携帯を耳から離すと、目の前にいる佐助にそれを渡す。
ええー、俺様なの?!と舞い戻ってきた携帯を佐助は嫌そうに見つめ、しぶしぶとそれを耳に当てる。

「・・・どうも」
『・・・っ、アンタら、一体まこに何して、』

途端に大声を上げる慶次に佐助は顔を顰め、ムッとしたように携帯を握り返す。

「あはー、今?まこちゃんが言ってる通りオシオキ中ってワケ。悪いねー、家の教育方針なの。いやいや、俺様もここまでするとは思わなかったけど、ほら、さっき窓んとこでさー・・・アンタ、旦那を挑発したろ?大丈夫だと思った?虎の若子は初心でおぼこだからって・・・・・・・・・は?今から?ハッ、もう『でんしゃ』も走ってないぜ?あっちと違って馬もないってのに、アンタ『めんきょ』も『くるま』もないだろ?これるモンなら来てみなよ。その間に旦那も俺様でおいしくまこちゃんを・・・・・・って、アレ、切れちゃった」

てへ、と笑う佐助に、まこともふにゃりと笑い返す。

「けいじさん、くるの?おうまさんでくるの?」

ぬぷぬぷと尻穴をほじっていたまこと身体を起こし、右に、左にと小首を傾げて佐助ににじり寄る。
自分の胸の中にもぐりこんで来たまことの頭を撫でてやりながら、未だうっすらと残る涙の跡を拭ってやる。

「んー、どうかな。アイツの棲家は『とない』挟んで反対側だろ?風のバサラ持ちって言っても道は入り組んでるし・・・一体何時かかるかね」

「・・・『たくしー』がある」

抱き合う二人を、むっとした表情でみていた幸村が呟く。

「は?なにそれ?」
「この前てれびで見た。籠のような役割のくるまだ」
「へぇ・・・。ンー、じゃ、まこちゃん、前田の旦那もうしばらくしたら来るって」

どうしよっか?とまことと同じ方向に小首をかしげた佐助に、まことは嬉しそうに笑い、そのまま身体を下にずらしていく。

「けいじさんくるの・・・ふふ、まこ、けいじさんにも、たくさんおしおきしてもらうの。だから、もっとわるいこにならなきゃ・・・」

そうして佐助の股座に頬を擦りつけ、半ば勃起しているペニスを見つけると服の上から愛撫をするように唇を這わせ始めたまことに、幸村と佐助はぽかんと口を開けて顔を見合わせる。

「なんか、新しいまこちゃん発見ってカンジ?・・・って、まこちゃん、まってまってまった!それやばいかも・・・っは、」
「・・・仕置きにならんなこれは・・・」

冷静になった幸村の心に、目の前で揺れる内出血まみれの尻たぶが痛々しいと、悔恨の情がわいてくる。
丸い尻にいくつも付いた自分の歯形に眉根を寄せそっと指を這わせるが、しかしまことの唇からは甘い吐息がはぅ、と漏れ、潤んだ瞳で幸村を振り返る。

「ゆ、きむらさ、おしり、がぶって・・・もっとがぶって、つよく噛んで・・・」

引きずり出した佐助のペニスに頬を寄せ、まことは尻を高く掲げる。
尻の狭間を細い指が割り開き、ぷちゅ、と濡れた音を立てめくれてひくついている尻穴が眼下に晒された。

「・・・ッ、ッ、まこと・・・殿・・・ッ、まこと殿っ!まこと殿おっ!!」

視界に入るうねる赤い肉に、幸村の瞳の縁はカッと燃え、気付くとその細い身体を組み敷いていた。



タクシーを使わず、その足だけで慶次が宝野家の居間に飛び込んでくるのは数十分後の事になる。
怒髪天を衝く表情で額に青筋を立て、汗まみれで荒い息を整える慶次にさすがの二人も肝が冷えたが、まことは尻穴に佐助のペニスを咥え込んだまま、嬉しそうに慶次に向かって手を伸ばす。

「けいじさん!けいじさんっ!まこ、まこわるいこなのっ!おちんちんっ、けいじさんじゃないひとのおちんちんでおしりぱんぱんってされて、きもちぃのぉ!んっ!ヒッ、あう、イっちゃう!あぅ、あっ、あっ、ひっ、けいじ、さ、見て、まこが他の人のおちんちんでイちゃうところみてぇ!」

「・・・っ、・・・っ!・・・ああ、まこ、お仕置き、されたいんだよな?」

その後の慶次の『オシオキ』は、幸村と佐助の想像を絶するもので、二人は慶次に対する見解を改めた。
最後には気を飛ばしてしまったまことを抱え、無言で去ろうとする慶次を止めることは出来なかった。

「あーあ、まこちゃんにオシオキできるのもこれで最後だったか」

そう呟く佐助を幸村は不思議そうに見返す。

「なぜだ?」
「なぜって・・・前田の旦那、もう二度とまこちゃんの事、この家には帰さないでしょ」

下手すると・・・錠がかかる部屋に閉じ込められちゃうかも。うん。俺様ならそうするな。と眼を眇める佐助に、幸村は「しかし、まこと殿の家はここでござる!」とむん、と鼻息を一つ吐き出す。

「まこと殿の帰るべき家はここだ。何があろうと連絡もなしに帰ってくるのが遅れたならば、」

嫉妬を超え、何かが吹っ切れた幸村は「仕置きをしなければ」とにこやかな笑顔を浮かべる。
恋仲の前田殿には恋仲の権利が、同居人の自分には同居人の権利がある。
その権利を失わない為には自分は何とでも戦おうぞ!と拳を握る幸村に、佐助は『あー、こっちにズレちゃったか・・・』とトホホと肩を落とす。

どこかずれた四人の関係は、慶次が二人よりも先にまことを連れて戦国の時代に帰るまで続き、それまでまことの身体には常に青黒い内出血か桜の花びらのような所有印が散り続ける事になるのだった。
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