初夢3

「あの、みたらし50本と、餡を50本、お願いします・・・」

店主がぎょっとした顔をしているのはこの自分の格好のせいなのか、この団子の本数のせいなのか。

城下に降りた瞬間からすれ違う人が最初はぎょっとした顔で、次にはじろじろとおかしな目で自分を見るのがわかった。
風呂敷を広げ、一番見られたくない胸元とペニスを隠しているが、歩く度に下の裾が上がってしまい、後ろ姿では尻たぶが半分出てしまう。
帰りはこの大量の団子を風呂敷に包んで持って帰らなければいけない。
どうやって体を隠して帰ろう、と頭を悩ませていると、女の子が「お団子、もうちょっとお待ち下さいね。お茶でもどうぞ。・・・あなた芸人さん?大変ね」と憐憫の眼差しを送ってくるのに、まことはなんと応えてよいのか分からず小さく首を振るだけだった。

たくさんの団子は意外に重量があり、半分ずつ片手片手で持たなければバランスが取りづらい。
お店でもう一つ風呂敷を借りたが、身体の前面すら隠せなくなってしまったまことは、ただただ真っ赤に染まり、涙を浮かべた顔を誰とも合わせないように深く俯いて町を小走りに歩く。
顔も目も伏せ、気配だけを感じて歩いているせいか、いつもよりも視線に敏感になっている。
ちり、と時折胸に尻に、ペニスに走る感覚。
じりじりと暗く熱い男の視線。

『やだ、やだやだ、みてる、見られてる、胸だけじゃない、おちんちんも・・・っ、やだぁ、お尻またはみ出してる・・・!』

真っ昼間に裸よりも恥ずかしいこんな格好をして町を歩く自分はどう思われているだろうか。
ちらりと顔を上げると、幾人もの男がサッと目を反らし、おかしな笑みを浮かべたまま、こそこそと何かを耳打ちし合っている。

『・・・っ、きっとまこの事、いやらしい奴、って言ってる・・・、まこのこと、いやらしいって・・・』

俯いた先の乳輪の微かな膨らみしかなかった胸元に、ツンと小さな突起が出て来ている事に気がつきまことはとうとう身体を大きく震わせた。

『・・・やだぁ、乳首大きくなってる・・・っ』

乳首が立ったらまたおかしな目で見られてしまう。おかしな目で見られたら、ますます乳首が大きくなってしまう。
腰元にはじわじわと重たい熱が溜まりはじめ、浅い呼吸も熱く、荒くなってゆく。
よろめき始めた足元に、このままじゃお八つの時間に間に合わない、佐助さんにお尻ぶたれちゃう、人のいない、人目のない所に行かなきゃ・・・、と民家の立ち並んだ奥、薄暗い森へと進路を変える。
忍鳥を置いてきた森に繋がっているに違いない。
少し遠回りになるが、この人気のない森を抜けた方が自分の足も速くなるだろうとまことは今にも膝をついてしまいそうな足を奮い立たせ、小さな路地を歩き始めた。
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