初夢1

まことは忍者になる為の面接に来ていた。
純和風の古民家の一室でチョンマゲにスーツを着た男と10分程度面接をした後、「合格だよ宝野君。これから君に色々教えてくれる教官の猿飛佐助だ。仲良くしたまえ」と佐助を紹介された時、また「乳首で索敵してね!」なんて言われてしまうのかと心配したが佐助はいたって真面目に真顔でキリキリと指示を出し、その後の研修修行で薄暗く狭い屋根裏で二人きりになって密着してもちっともおかしな仕草を見せる事無くたんたんと研修は進んでいった。
忍って言ってもさ、やることはどこぞこの武将の浮気調査や、家出をした姫様の行方の聞き込み調査ばっかりで嫌になるぜ。と愚痴を零す佐助の話を、まことは麻の草を飛び越えながら『忍者って探偵みたいなんだなぁ』と頷きながら聞いていた。

まことが一番気に入ったのは佐助の飼っている真っ黒な忍鳥を借りて、高い高い崖の上からびゅういと風に乗る練習だ。
最初は崖を覗き込んでそのあんまりの高さに足が震えたが、「ほらまこちゃん。あれ富士山。綺麗だろ?下じゃなくて、遠くの景色を見て楽しみながら飛ぶんだよ」と背中を叩かれ、空気の澄んだ山の中、こんなとこからもはっきりと見える雪で真っ白な嶺に、まことは勇気を貰って飛び降りた。
ひゅう、と腹の奥が浮く感覚に慣れ、ぎゅっと瞑っていた目を開けると、そこには何にも遮られる事のない緑色のパノラマが広がっていた。

「うわぁ、うわあ!すごい、すごいです佐助さん!」

両手で握った忍鳥の足も、しっかりしていてゆるぎない。
いつの間にか凧に乗った佐助が隣にいて「いい景色だろ?・・・うん、まこちゃん飛ぶのすごくうまい!よくできてるぜ?」と笑顔で褒められ、まことは冷たい風のせいだけではなく頬を赤らめた。


しばらく研修を受けた後、制服を支給するからちょっとこっちにおいで、と呼ばれ、まことがもらった装備品は皮でできたつるつるとした小さな布だった。
一枚しかないそれを広げると、袖も裾もない子供服程度の大きさで、小さなそれをどうやって着るのかまことには全然想像もつかない。
服を持ったままおろおろしているまことに、佐助は「あはー、これ俺様が考えたんだ。ぜーったいにまこちゃんに似合うから」と満面の笑みを浮かべながら着用方法を説明してゆく。
ハイネックになっている襟元の切れ目の内側に小さな穴があり、そこに結び目が隠されている。
その結び目を解くと皮に編みこまれ縦横無尽に走っている細く頑丈な糸が緩み、体がはいるようになるという事らしい。
皮も丈夫だし、またこの糸が特注品でどんな刃物でも切れないんだぜ!と佐助が自慢げに言うが、剥き出しになるだろう手足はどうするのだろうか・・・とまことは少し不安気に制服を摘む。

「これ、一人じゃ着られないから俺様が手伝ってあげる」

そんな事を言って・・・、佐助さんは信用がならない、とまことは小さく頬を膨らませる。
しかし、下着も全部脱いで、装着できたら声かけてねー、とあっさりと部屋を出て行った佐助に、まことは佐助さんも教官になると真面目になってエッチな・・・ん、変な事しないんだな、と身構えてしまった自分の過剰さを申し訳なく思った。
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