いたずらハロウィン3

「にゃんで・・・んんっ、なんで、こんな風ににゃっちゃったんでしょう・・・」

家に着き、定位置である茶の間の座椅子に座ったまことは口調も気をつければ普段と変わらないまでに落ち着いてきた。
しかし頭と尻に生えた獣の部分は消えることなく、尻尾は所在無さげに揺れ、頭の上の耳はぺたりと伏せられている。
挙句、尻尾が邪魔でズボンも下着も穿けず、持っている中で一番大きなTシャツを羽織り、女の子が着るワンピースのような格好をしているのもなんだか気恥ずかしくてたまらない。
幸村も真面目な顔をして「むむ・・・」と唸ってはいるものの、その視線はちらちらとまことの耳や尻尾や腿の半ばまでしか隠していないシャツの裾に向けられている。

「これってやっぱり猫なのかにゃ・・・?」

まことはちらちらと向けられる視線に気付くことなく、手鏡を覗いて自分の頭に生えた耳を見る。
やっぱりどう見ても、猫の耳だ。
へちゃりと寝ている耳を意識すると、ピンと立たせたりきょろきょろと周囲を伺うように動かしたりすることができるが、頭に隠すようにぺったりと伏せても、真っ黒の毛並みは髪の毛よりもツヤがあって明らかに異質で隠しようもなく猫の耳だ。
これ、明日からどうしよう・・・、とまことは泣きそうな気持ちで耳を立たせたり寝かせたりと必死になっているが、幸村は目の前でぴるぴると動く猫の耳に、みぞおち辺りから熱い何かが込みあがってくるのを感じる。
込み上がり、沸き上がり、とうとうそれが胸一杯に溢れ、幸村は堪えられない思いに突き動かされるようにまことに手を伸ばす。

「うむ!猫でござろう!まこと殿っ、そのっ、某、まこと殿を・・・」

撫でてもよいだろうか・・・、と手をわきわきさせながら涙目になっているまことににじりよる。
外で生えたての耳に触れたが、ひやりとする程滑らかな毛並みだった。
もう一度あの耳に、そしてできる事ならあの揺れ動く尾にも触れて撫でて揉んでみたい。
決して破廉恥で邪な考えではなく、正面からまっとうに猫となったまこと殿を撫でて愛でたいのだ!と幸村は心中で叫ぶが、その思いからして邪だとは気がつかない。

「優しく、触れまする・・・」

心を込めじっと真顔でまことを見つめると、まことは困ったような表情をして頬を赤く染める。
「・・・幸村さん、なんだかエッチにゃ・・・」とぽそりとまことは呟き、幸村に向かってそっと耳の生えた頭を向けた。



しかしその後、お見合い状態のまま2人は膠着し、まことの尻尾が落ち着かなくぱたんぱたんと畳を叩く音だけが居間に響く。
幸村はまことに手を伸ばしては耳に触れそうな位置でぴたりと動きを止め、わきわきと指を動かし、ぎゅっと拳を握って結局また自分の膝に戻す、という行為を繰り返している。
まこと殿は気付いていないのだろうか。
真っ赤に染めた頬に、潤んだまん丸の瞳、そして頭にはピンと立った猫の耳がついている。
幸村が手を伸ばすたびに、その立った耳がピクリと動いて幸村の動向を探る。
そのままじわじわと近づけてゆくと、まことの目は相変わらずまん丸で動きがないのに、耳は怯えたようにどんどんと伏せられていってしまうのだ。
へたり、と伏せられてゆく耳に、自分はそんなに恐ろしいのだろうか、とそれ以上手を伸ばせなくなってしまい、くぅ!と固く拳を握り締める幸村を見て、まことはきょとんと首を傾げた。


幸村さんが手の伸ばしてくる度に、猫の耳がその手の熱を敏感に察知する。
じりじりと熱が近づいてきて、もう少しで熱くて固いのが耳に触れる・・・と緊張すると、幸村さんはパッと手を遠ざけてしまう。
もしかしたら焦らされているのかもしれない・・・。
そんな事、幸村さんに限ってあるわけがないのに思考がおかしくなってしまう。
それになんだか猫の耳を見つめられていると、乳首の奥がチリチリと痛痒くなってきてお腹の奥が熱くなってくるのだ。
チラリと火照っている胸元を見下ろすと、薄手だけれども大きめのシャツのおかげで乳首がどうなっているのか全然わからない。
ほっとしたような、でもどうなっているのかわからなくて怖いような気分を味わいながら、また幸村さんが手を伸ばしてくるのを感じ、乳首の奥がツキンと痛んだ。
左耳にばかり手を伸ばしてくるので、左の乳首ばっかりチクチクする。
まことはチラリと幸村を伺い猫の耳を注視しているのを確認すると、そっとシャツの裾を引っ張って乳首が浮いてしまわないかと確かめる。

『ぁ・・・おっぱい、ぷくってなってるぅ・・・』

やっぱりだ。左の乳首は乳輪が膨らんできてしまっている。
どこにも触れられていないのに、ただ耳を触れるか触れないかで焦らさせているだけなのに、なんで自分はこんなにいやらしい気分になってしまっているのだろうか。
それなのに、頭の上でじりじりと猫の耳を熱している手がまた遠ざかってゆく気配に、まことは切なくなって悲しくなって、泣き出しそうになりながらとうとう幸村に自分からにじり寄った。
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