月明かり3


その声は、頬から耳元に囁くように吹きかけられた。
身を屈めた為に、たわんだ袂から月明かりに照らされた胸元が見える、いや、どうしても目に入ってしまう、いや・・・覗き込んで注視してしまった・・・。

「さ、先の、世って、」
「先の世は、先の世です。何年先かは・・・ふふ、秘密です。・・・変な術や、幻覚ではないですよ?どうしてこういう事になってしまったのか、わからないんですけれども・・・僕達、一度時を、渡っているでしょう?だからこういう事があるのかもしれない、って。普通だったらありえない・・・ぁ、」

耳元の声が、小さく甘い吐息を漏らしたのに慶次はギクリと体を震わせた。

「・・・慶次さん、話聞いてます?・・・もう、今も昔も変わらずエッチなんだから・・・」
「い、いや!これは!その・・・」

胸元が視線に敏感なのは変わりがないらしい。
もう、エッチ、と胸元をつつかれ、その手が胸元を隠してしまった。
それが非常に残念に感じ、慶次は慌てて視線をまことの顔に戻す。
──優しいまなざしとかち合ってしまった。
うっとりと細められた瞳、その目元の縁をぽっと桃色に染め、にこにこと満面の笑みを浮かべて青年のまことは慶次の腹の上に横ばいになり頬杖をつく。

「・・・そ、そんな目で見ないでくれよ・・・あ、ああ!そうだ!アンタは少し先の俺のまことだっていうんだったら、俺のあの、ちんまいまことはどこに行っちまったんだ?!」
「ああ、僕と入れ替わってしまったみたいで。『貴方のまことちゃん』は、もうちょっと先の世の『僕の慶次さん』の所にいます」
「もうちょっと先の・・・俺・・・」
「はい。この事、僕も覚えてます。・・・そう、今だったんですね・・・少し肌寒くて、隣の暖かい・・・慶次さんに擦り寄って・・・でも、なんだか違和感を覚えて目を開けたら、慶次さんは先の世の大きな慶次さんで・・・それで・・・」

そしてまことは恥ずかしげにポッと頬を染め、見つめあっていた慶次から視線を逸らした。

「えええっ?!何、何された?!っていうか俺がしたんだよなっ?!お、俺っ、何やっちまったのっ?!」

思わず青年のまことの肩を掴んでしまう。
それが思っていたよりも細く、薄く、暖かい事に思わず動揺し、慌てて離そうとした手を握られた。
視線を戻すと、逸らしていた瞳をにこにこと緩ませた顔と目が合った。

「ふふっ、・・・秘密です」

掴まれた手の平の中に、小さくて暖かいまことの手が潜り込んでくる。
そのまま指股に細い指を差し込まれ、指同士を絡め取られてしまった。

「・・・アンタ、何、」
「慶次さん、僕の事も『まこ』って呼んでください」

指股をまことの指がしゅるしゅると行き来したかと思うと、指腹に絡みついてきゅうきゅうと扱かれる。
互いに乾いた手のひらで、カサカサとしたこそばゆい感触だというのに、空気はねっとりとした濃厚な物になっていた。
いつの間にか、跨られてくっついているまことの腰元が熱を持ち始めている。

「あ、その・・・アンタ、・・・『まこ』が来た先の世って、何年後の話なんだ?」
「秘密です」

この淫靡な空気を払拭しようと慶次は当たり障りのない質問をまことに投げかけたが、まことは笑顔のままあっさりと答えを拒否する。

「なんで・・・う、っ?!」

柔らかい、まことの唇が掴まれたままの指先に落とされた。
ちゅぱっ、と軽い音を立ててすぐにそれは離れたが、一瞬唇の中の粘膜に包まれた指先は、外気に晒されると途端に冷えて心もとなくなっていく。

「先の世の事は話せません。全部、秘密です。わかるでしょう?慶次さん」

掴んでいた手が、唇を拒否しなかった事に気付いたまことは、再び慶次の指先を唇へと持ち上げる。
しかし今度は口内に含める事はなく、指の背に、固い腹に、柔らかな唇肉を擦りつけるだけだ。

「・・・でも、なにもかにも、秘密ばっかりじゃ慶次さんがかわいそうだから・・・」

指先に吐息を吹きかけるように囁く。
その吐息は暖かいが、先ほど感じた口内の粘膜の熱さにはかなわない。
慶次は無意識に指先を動かし、まことの暖かな唇を撫でると吐息が漏れている狭間にあて、この粘膜の中に入れてくれないか、とばかりに小さな歯を擦る。

「ン・・・ふふ、だから、かわいい慶次さんには、イイこと、教えてあげますね?」

そう笑った口元が、やっと慶次の指先を含んでくれた。
顔にかかった髪を耳にかけ、息をつめて見上げている慶次をひたりと見下ろす。
ちゅ、と一度指先に優しく口づけをすると、そのまま太い指横に唇を滑らせ、根本に届くとそこから大きく舌を出し、先端までベロォと舐め上げる。
そしてわざと指に滴るように絡めた唾液を、今度は大きく口を開き、ズゾゾと下品な音を立てて吸いしゃぶる。

「う、まこ、そ、そんなこと、どこで、」
「・・・慶次さんが教えてくれたんですよ?」

そのまま甘く濡れた、下品な音を立ててまことは慶次の指の股まで丁寧に舐めしゃぶる。

「ほら、慶次さん、乳首、見てください。んふふ、本当はずぅっと、ちらちら、盗み見してたでしょう?・・・慶次さんったら、わるい子ですね。・・・慶次さんの僕は、まだ、乳首を見られるの、恥ずかしがってますか?」

まことは着物の袷に片手を入れるとそっと開き、先ほどこっそりと盗み見ていた乳首を慶次の目の前に堂々と晒す。

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