少年時を止める15


そんな興奮にまみれ、思うがままに求め合う初めてのセックス以来、佐助とまことは事あるごとにセックスやそれの真似事をした。
まことは佐助の妄想以上にセックスに対し博識で、貪欲で、淫蕩だった。
黄色い顔をした佐助に「そういやさぁ、ウサギって性欲強いんだぜ?」とニヤニヤしながら話しかけてきた前田慶次を殴ってやろうとして避けられたので、ポーズをして頬を思い切り抓ってやったのも記憶に新しい。
それでも、そんな本当の偽りのないいやらしいまことを見せてくれるのが嬉しく思えたものだ。

コンドームの箱の底が見えるようになる頃には、まことの性格は見違える程に変わった。
すべては佐助が何度も何度も言い聞かせた「まこちゃんは変態じゃない、どんなまこちゃんでも大好き」という言葉や態度のおかげで、愛されている自信がついたせいか、まことはおどおどとする事や「僕なんて、僕みたいな、」という発言をする事が少なくなった。
以前はねだれなかったキスもやっと自分から求められるようになった。
俯きがちだった顔は前を向いてきらめく笑顔を浮かべ、どもりがちだった口調も誰に対しても明るく受け答えが出来るようになった。
そうして、自然と人の目を引き、付き合いも増え、佐助以外の人と過ごす事も多くなるようになり、今に至る。



まことが明るくなるにつれ、佐助がどこか危うい暗さを秘めはじめたのを二人の近くにいた幸村はなんとなく気が付いていた。
何か言ってやりたいが色恋の事は良くわからず、この件は自分よりも色恋に詳しく二人を良く知る慶次に頼り切りになっていた。

明るくなったまことだが、それでも以前のようにたまにしゃがみこむ事があった。
急な眩暈か立ち眩みか、以前は頻繁にあり、佐助と付き合うようになってから少なくなり、幸村は精神的な、気の持ちようで何とかなる物の一種だと思っていたが、最近それがまた増えてきたように感じて不思議に思っていた。
先程も、皆で談笑している時に急にまことの身体がくらりと倒れたのだ。

「まこと殿っ?!大丈夫でござるかっ?!」

慌てて手を貸せば、触れたまことの身体はシャツ越しにも熱く火照りきっていて、俯いた首筋は真っ赤に染まり、うっすらと汗をかいていた。
一寸前まではこちらまで幸せになってしまうような明るい笑顔を浮かべていたというのに、今はまるきり熱でもある様子で、これは気の持ちようでどうにかなるものではなく、やっぱり本当は何か悪い病なのではないのか、と不安になって医務室へ抱えて行こうとした所を佐助に止められた。

「まこちゃん、いつもの?・・・大丈夫、旦那、俺様にまかせて」
「うむ!まこと殿、しっかりなされよ!今佐助が医務室に連れて行ってくれるからな!」

まことのこんな様子に慣れている風な佐助に託し、後ろ髪を引かれながらも先程まで談笑をしていた輪に戻れば難しい顔をした慶次と目が合った。

「どうした、慶次殿?」
「・・・猿飛の奴、大丈夫かい?」
「佐助が?まこと殿ではなく?」
「アイツ、たまーにヤバい目付きになってるぜ?今もちょっとそうだったし。・・・ったくさぁ、せーっかくまこと・・・んっと、あ、いやいやなんでもない!まぁ、何悶々としてんだかって話だよな。あ、気分転換に今日帰りカラオケ行こうぜ?猿飛とまこも誘って!な!」

『ヤバい目付きになってるぜ?今もちょっとそうだったし』という慶次の発言に、幸村の脳裏に何かが閃いたが、慶次の提案に周囲が飛びつき再度談笑が始まり、それに気を取られている内に、何かを閃いた事すら忘れてしまった。




相変わらず他の男の事を嬉々として語る恋人、まことに、佐助は殊更にっこりとほほ笑みを返した。
まことはその笑みが話の続きを促しているのだ、と疑いもせずに嬉しげに頬を赤らめると、身振りを大きくして前田慶次から聞いた話を楽しげに語る。

「慶次さん、利家さんのパンツを汚いって放り投げて、ぷっ、そ、それが利家さんのっ、顔にっ、っふふふ、そ、それでもう利家さん、カンカンに怒っちゃったみたいで───あ、噂をすれば!慶次さん!」

今まで佐助を見つめていた瞳が斜め後ろに注がれる。
頬を紅潮させたまま、瞳を輝かせたまま、満面の笑みを浮かべたまま、その視線が佐助から外され、自分以外の男に注がれる。

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