少年時を止める14


まことの部屋は普通に片付いており、綺麗すぎもせず、汚くもないその空間は居心地が良く、佐助の好感を増々上昇させた。
でもちょっとベッドが小さいかも。まこちゃんサイズなのかな?なんて事を考えながらそのベッドの上に抱き上げていたまことを下し、佐助自身も隣に座る。

「まこちゃん・・・」

仕切り直し、とばかりに甘い声でまことの名前を囁き、肩を抱こうとした手が空を切った。

「・・・・・・まこちゃん・・・?」

ベッドに下ろされたまことは佐助に構わずに、すぐにその下を覗き込み手を突っ込んで漁り始め、ずるずると何かを引きずり出した。

「あっ、あの、よくわからないからっ、いっぱい・・・いっぱい、買っちゃったんです・・・」
「ん、なぁっ?!」

ドン!と目の前に置かれた白いダンボール箱には「One Gross」と端っこに書かれていおり、咄嗟に佐助の脳内には『確か、12ダースが1グロスって事は、1ダースが12個だから、12×12で144個・・・・・・144回分?!』と、しおしおになった自分が描かれた。

「ちょ、ちょっと待った、待った、まこちゃん、これって、」
「あと、あとっ、さっ、さすけっ、さんっ、ンッ、こ、これもっ、これも見てくださいっ、これっ、すっごいトロトロなんですっ、」

まことの瞳はキラキラとしているのにどこか焦点があっておらず、舌足らずな口調と相まって淫猥な空気を醸している。
その震える手に握られているのは、所謂ローションというものではないだろうか。
なんて準備がいいんだ!もしやまことは自分が思っていたよりも初心なウサギちゃんではなかったのか?!と焦っている視界に、まことの手に握られたローションの容器が開封済みで、半分ほど減っているのが飛び込んできた。
何を思うよりも先に、プツ、と佐助の中で何かが切れる音がして、焦って慌てていた感情が引き波のように去って行くと同時に、何か得体の知れないものが腹の奥からうねる様に湧いてきた。

「・・・・・・・・・まこちゃん、なんでそれ減ってんの・・・?中身がトロトロってなんで知ってるの?使ったの・・・?誰と?なぁ、誰と、誰と使ったのさ・・・」

蓋を開けようとしていたまことの手からローションを奪い、それを電灯にかざして振れば、中に入った透明の液体は瓶状の容器の中をねっとりと流れていく。

「とろとろっ、っ、・・・っ?・・・だ、だれと?」
「ほら、とろとろ、半分なくなっちゃってるじゃん・・・・・・あぁ、これ、ゴムも使った?これ少なくなってるよね?・・・・・・・・・誰と?まこちゃん・・・誰と使ったの?まこちゃんには怒らないから、俺様に、教えて・・・?」

まことの潤んで、きらめいていた丸い瞳に写り込んだ佐助の表情は、ギラギラと嫉妬と欲情に歪んでいた。
醜い、なんて醜悪だ、とそのまことの瞳に写った自分を嫌悪しながらも伸ばす手を止められない自分を、しかしまことは止める事なくぽう、と惚けるように見つめているだけだった。
ギシリ、とベッドを軋ませながらまことの身体を押し倒し、その身に跨ると細い首元に手を伸ばす。
そして、その跨った腰元が既に固く立ち上がっているのに気づいて佐助はパチリ、と大きく瞬きをした。

「まこ、ちゃん・・・?これ、って・・・」
「あっ、ヤ・・・はずかし・・・あっ、あっ!押し付けないでぇっ!ダメ、ごりごりしちゃだめぇっ!」

尻に押し付けられた熱い塊を確認するように体重をかけると下のまことがビクビクとしなった。
まことがびく、びく、と身をしならせるその度に、惚けた瞳がとろり、とろり、と理性の光を失っていくのが分かり、佐助は思わず感じていた怒りや嫉妬を忘れ、喉を鳴らす。
そのゴクリ、と目の前で上下に動く喉仏を見たまことは、堪えきれないとばかりに首をふり「ごめんなさいぃ!」と叫び声を上げた。

「ごめんなさい、さ、さすけさ、ご、ごめんなさ、まこ、まこ自分でこれ、使ったの、」
「は?」

佐助の鈍く光っている瞳と、まことの光の入っていない蕩けた瞳の視線が合った瞬間、まことの中の何かが弾けたようだった。

「っ、っっっ────ッ!ぁっ、まこ、まこ、いつも佐助さんで、お、お、おな、おなにー、オナニーしてて、お尻、いれるのにこれつかうとっ、ンッ、とっ、とろとろっ、とってもきもちよくてっ!」
「おっ、オナ・・・」
「そう、そうなの、まこ、まこいっつも佐助さんを見て、やらしくなってて、ぅ、いつも、き、キスするだけで、おちんちん、びりびりってして、お尻のおくも、じんじんってするの!い、家かえって、まこ、毎日おなにーしてっ、おもちゃ、かって、これも、こっちも買って、佐助さんとせ、せっくしゅ、してるつもりで、おなにーしてっ!」

熱で浮ついたように語るまことの瞳に映った佐助は愕然とした顔で、しかし先ほどまでの嫉妬でぎらついた瞳ではなく、まことの告白に興奮し、欲情を宿した瞳をしていた。
そんな佐助の瞳の色の変化にまことは気づいているのだろう、幾度も唾を飲み、舌で唇を舐めながら佐助に自分がどんな風に佐助を思って自慰をするのかを語る。

「おもちゃに、ゴム、つけて、とろとろもかけて、お尻の穴、ツンツンって、して、さすけさんの、おっ、おち、ン、さ、さすけさんのだと思って、そうすると、すごくきもちよくて、」
「ま、まって、今、俺様の?俺様のなに?何だと思ってたの?」

聞き逃せない言葉の欠片を聞いて、佐助は思わずゴクリと生唾を飲みこみまことに詰め寄った。
深呼吸を繰り返すまことの唇の端からひぃい、と小さな悲鳴があがる。
佐助の眼下のまことの薄い胸は激しく上下して震えている。すぐ上のシャツから伸びる細い首筋は真っ赤に染まり、飲みこめなかった唾液か汗かでうっすらと濡れていた。
まことの肩を握る佐助の手の平もじっとりと汗で湿っているし、息も荒い。

「・・・まこちゃん、俺様の、何を想像して尻、いじってンの?ほら、ほらもう一回言ってみて?」
「は、あ、あぁぁ、んぅううーっ!はっ、はぅっ、さ、さすけさ、さすけさんのっ、おっ、おっ、おちんちん・・・おちんちんっ!おちんちんなのっ!」

「おちんちん」と言った時の、「ち」の発音で、まことの唇から少量の唾液が跳ね佐助の唇の端に飛んだ。
小さなその刺激だというのに、それがこの淫語と共にまことの唇から飛び出た唾液だというだけで、佐助のペニスがグンと熱を持ち、その先からじわりとしたものが滲んだのが分かった。

「っあ、まこ、まこちゃん、まこちゃんっ!」
「ひっ、ひあ、あん、ぷ、んむ・・・」

我慢ができなかった。
初めてのセックスの時はがっつくような真似はしないようにしよう、と人の話を聞いたり雑誌を読んでりして思ったのだが、ここまで煽られて我慢ができる理性を佐助は持っていなかった。
まことの抱擁の初めてを奪ってしまい罪悪感を感じてから、佐助は何かにつけてまことと『はじめて』の事をするのを望んでいた。
だからこのローションだって初めて使うのは二人でが良かったし、このグロス単位のコンドームだって封を開けるのは二人でが良かった。
けれども、そんな佐助の想いをふっとばしてしまう程に、まことの告白、まことの存在は、佐助の劣情を煽るのだ。

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