夜明け前3


ガバリ、と勢い良く布団を跳ね上げ身を起こすと腕枕から落ちたまことがシーツにコロコロと転がった。
そこを掴み寄せて仰向けに寝かせ、馬乗りになる。
自分の影が落ちたまことの寝顔にごくり、と喉が鳴った。
頬に陰を落とす睫毛の長さも、寝息を立てる唇の形も全部自分の良く知るまことのものだ。どこをどう見てもまことだ。
ここまでされてもびくともせず、くぅくぅと心地良さそうに寝息を立てているところもまたまことだと思う。
しかし、まことのトレードマークと言ってもよかったあの豊満な胸がすっかり、まったく、ぜんぜん、なくなってしまっているのだ。
まことが今着ている胸元が大きく開いたパジャマは慶次のものだ。
自分の匂いが好きだというまことに、慶次は使っていたパジャマのシャツだけを渡し、それをまことの寝巻きにしてやった。
それを羽織って恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかみながら、ワンピースのようになったぶかぶかのパジャマの袖口の匂いをスンスンと嗅いでいたのはまだ記憶に新しい。
その時は、パジャマの胸元はむっちりとした乳房が盛り上がり、艶かしい肉の谷間を作っていたはずだ。
なのに今は───

「ない・・・」

呆然とした、掠れた慶次の声が薄暗い部屋に響く。
がばりと大きく開いたパジャマの胸元は華奢な鎖骨ばかりが目立ち、谷間の欠片もない。
まことに馬乗りになったまま、慶次はプチプチとまことのパジャマのボタンを外す。
そしてバッと開いたそこにはやはりあの豊満な乳房はなく、小さく自己主張している乳輪がふっくらと色づいているだけだった。

「やっぱりまったい・・・ん?」

『まったいらだ』と言いかけ、慶次は唇をつぐんだ。
──まったいらではないかもしれない。
慶次が大きな手の平で胸元をぎゅう、と揉むと、柔い肉が薄く持ち上がる。
跨った身体がヒクリと戦慄いたのに、痛かったのか、と手を離し、平の部分で優しく撫でてやるとふよふよした薄い肉の弾力をそこに感じる。

「超貧乳・・・」

まったいらではなかったが、まことの巨乳は一晩の間に比べ物にならない程の貧乳になってしまっていた。
柔丘のてっぺんについた色の違う乳輪をくちくちといじりながら、慶次はどんどん赤く染まっていくまことの顔を見つめ、一体何がまことの身に起こったのだろうか、と愕然としていた。
いつもと同じ夜を過ごしたはずだ。
変なモノを食べさせたつもりもない。
胸が縮む病気なんて聞いた事もない。
愕然としながらも慶次の指先はいつもと同じようにまことの乳首を勃起させようと絶え間なく動き回る。
膨らんだ乳輪を指先で揉みこんでやれば、埋まっている乳首が乳輪の中で固くしこってくる。
それを摘まんで捏ねていると、チュッ、と乳輪の小さな切れ目を押し上げて、指を弾く肉の芽が顔を出す。

「・・・まこ、だよなぁ・・・ええぇ・・・そんじゃ、あのおっぱい、どこいっちまったんだ?」

真っ赤な顔に次第にうっすらと汗をかきはじめ、ふぅふぅと荒い寝息を立てながらも目を覚まさないまことに慶次はポリ、と頬を掻く。
いつもの愛撫で同じように勃起した乳首。
よく見れば赤く腫れた乳輪の横に寝る前に薄くつけたキスマークが残っている。
本当にそのまま縮んでしまったまことの胸に、慶次はどうしたものかと首を右へ、左へと傾げていたが、ささやかな胸の中央にある赤く腫れぼったくなった乳輪と、その中央からぷっちりと頭を出している乳首の絵面にコクリと生唾を飲み込んだ。
完全に勃起した乳首は元と同じ大きさなのだろう。
胸が大きかった時にはそこまで気にならなかったが、こうして薄く、小さくなった胸についていると酷くアンバランスでイカガワしい。
まるで乳首自体が性器のようだ、と慶次は自分も汗ばんできた手をそっと伸ばす。
まことの過敏な陰核を捏ねる時のように、優しく指先で摘んでそっと擦り上げると、途端に足で挟んでいたまことの身体がビクリと跳ね、腰をくねらせながら「ひぁう、」と甘い声を上げた。

「っ、え?アレ?まこ、ええっ?!」
「ぁ、あ、ン・・・、んぅ・・・ぅ・・・」

もっと、もっとと強請るように腰を震わせ擦り付けてくるまことに、しかし慶次は動けなかった。
まことの唇から溢れた喘ぎがあきらかにいつもの声と違い低かったせいもあるし、今、自分の尻に擦り付けられているまことの腰に、今まで感じた事のないモノが付いているのに気づいたからだ。
クックッ、と自分の尻に押し付けられるソレは酷く熱を持っていて、固く、そしてなんだか濡れているようだった。
慶次は恐る恐る腰を浮かせると、己の尻に擦り付けられているまことの腰を覗き込む。

「な、にぃ?!」

パジャマのシャツだけを纏った身体、その下半身は自分が買ってやったクリーム色のつるつるした生地にレースと淡いピンク色のリボンがついたパンティを穿いていた。
そのかわいらしいパンティの正面のリボンが付いている部分が盛り上がり、べったりと濡れているのを、慶次は口をぱっくりと開けて見つめてしまった。
まことに下着を買ってやったのは、この下着を脱がすのは自分だけだぞ、という意味を込めたのと、そして女の子用の下着を持っていないまことの為に、まことに似合う可愛いパンティをプレゼントしてやりたかったからだ。
そう。まことは女の子の下着を持っていなかった。
男だったからだ。
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