夜明け前2


「わるかった・・・まこ・・・待ってくれぇ・・・うぅ・・・まこ・・・ん・・・?ん?」

ピチチチ、とカーテン越しにでも聞こえる夜明けの合図の鳥の声に、布団の中で呻いていた慶次はやっと目を覚ますことができた。
まだ薄暗い早朝だが、見慣れた自室に顎に当る柔らかい髪、腕に感じる暖かい重みに強張っていた体がホッと解れていくのを感じた。

「ゆ、夢・・・まこ・・・よかった・・・!」

現実のまことは昨晩から変わらず自分の腕の中にいて、すうすうと幸せそうな寝息を立てている。
まことと慶次が付き合い始めてからまだ少しの期間しか経っていないが、その間の夜の殆どを二人は一緒に過ごしていた。
寮監督である片倉の目を掻い潜ってまことの部屋にもぐりこんだり、まことを自室に呼び入れたりするのだが、そのスリルすら楽しくてたまらない。
今晩もいつもと同じで夜の点呼が終わってからまことをそっと自室に呼び込み、少しだけ肌を触れ合わせて、そしてそのまま寝てしまったのだ。

「はぁ・・・まこ・・・あったけぇ・・・」

朝晩の冷え込みが厳しい季節、腕の中のまことの温もりが愛おしい。
まだ起きるのには随分と早い時間だ。
慶次は枕元に置いた携帯電話を一度開いて時間を確認すると、ふぁあ、と大きく欠伸をしてまことを腕の中に抱えなおし、後頭部に顔を埋めて蕩けそうになる瞼を閉じようとして、やっと気付いた違和感にピクリと肩を揺らした。

「・・・?」

スカッ、としたのだ。手が。スカッとした。

この短い期間で慶次とまことの寝位置というのが出来上がっており、横寝で眠るまことの背中に慶次が覆い被さり、足を絡めあう。
そして片腕で腕枕をしてやりながらもう片方の手をまことの腹の上か胸の上に置くのがいつものスタイルなのだが、その胸の上に置こうとした手が空を切ったのだ。
まことの乳房は豊満で、慶次のお気に入りの一つだ。
まこと自身にはこの素晴らしい乳房に何か思う事があるらしく、いくら慶次が大丈夫だ、色っぽい胸だ、と言い聞かせても見つめすぎるとイヤイヤと拒絶されてしまうのだが、それがまた慶次の雄心を刺激して止まないのをまことは分っているのだろうか。
昨晩眠りに着く前も、涙目でヤメテ、ヤメテと懇願するまことに舌なめずりをしながらそこをたっぷりと揉みこんでやった───・・・はずなのだが。

「・・・あれ?」

三度目、スカッと手が空を切って、やっと慶次は閉じていた瞼を開けまことの後頭部を見下ろした。
柔らかい髪、そこから香るシャンプーの匂いも、ちょこんと覗く桃色の耳朶もいつもと変わらないまことのものだ。
まだ寝ぼけている頭にハテナマークを浮かべながら、慶次はまことのパジャマの裾から手を潜り込ませ、寝息に合わせて上下する薄い腹を撫でてからじりじりと手の平を上へとあげて行く。

「ふ、ァ、ン・・・」

慶次の指先はすぐにコツリと固い肋骨にあたり、そのまま慣れ親しんだまことの豊満な下乳の肉には触れずに緩い丘のように慎ましやかな肉の付いた部分に到着した。
その丘の頭頂部と思われる所は他よりもふにゃりとした柔い肉がついており、そこを指先で捏ねるとまことの寝息が僅かに乱れる。

「・・・?あれ?・・・あれ?え?」

くにゅくにゅとそこを弄りながら次第に寝ぼけていた慶次の頭が覚醒する。

ない。胸がない。まことの胸がない!
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