屋上にて1


今日はとことんついていない、と政宗は真っ青に輝く空を見上げてため息を吐いた。


昼飯前に腹が減る育ち盛りの自分の為に、十時休みに食べる軽食を寮監督であり目付け役の小十郎が毎朝作っているのだが、今日はそれがまずかった。
いつもは菓子だろうとなんだろうとそれなりに美味いのに、今日の煮物と小さな握り飯はしょっぱくて、ビショビショで、糞まずかった。
最近転入してきた『オモシロイ奴』にちょっかいをかけまくっていたがそれが原因かもしれない、と形の悪い握り飯を頬張りながら政宗は眉間に皺を寄せた。小十郎はアイツの保護者をきどっていて、心配で心配でならないのだろう。
また、今日の日付が自分の出席番号と同じだからか朝から色々な授業であてられる。
更に前の席の黒田が休んでいるので壁になってくれるものが何もなく、こうして余所見をしているといつもなら気付かれないのにヒュンヒュンとチョークなんかが飛んでくるのだ。



「あれ?伊達のダンナ、なんか疲れてない?」
「修行が足りぬのであろう!政宗殿!飯を食ったら道場で、」
「ShutUp、猿、真田・・・ッチ・・・あーだりぃ・・・」

昼食は基本的に学食だが、最近は天気がいい日が続いているのもあって本来立ち入り禁止である屋上で食べていた。
街が眼下に見下ろせる屋上の入り口の上、給水塔の下で、それぞれ足をぶら下げながら各々にパンや握り飯を頬張っている。
いつもと同じ軽口をたたく佐助と幸村に、いつもと違って不機嫌な政宗はハンと鼻息を返すばかりだ。
空気を読む佐助はそんな政宗に小さく肩を上げるとイヤホンを耳にはめて遠くの景色を見ながらパンを齧り始めるが、相手の機嫌などお構いなしの幸村はどうした、なんだ、道場へ行こう、と政宗にしつこく食い下がる。

「・・・・・・・・・っだー!うるせぇんだよ真田幸村ぁ!」
「おお!その意気でござるっ!」

そんな幸村を無視して握り飯を頬張っていた政宗が肩を揺すり続ける幸村にいよいよ耐えられなくなったのはすぐの事で、屋上から3メートルはあるだろう場所で押し合い蹴り合いが始まった。

「わ、あ、あぶな!真田の旦那!伊達のダンナもやめなって!落ちて頭打ったら死ぬからね!もー何やって・・・・・・ン?」

暴れ始めた二人を止めようとした佐助がふ、と動きを止める。
立入禁止といえども、屋上は知る人ぞ知る密かな人気スポットだ。更にこういった時間には片倉や立花あたりの教師が侵入者はいないか確認に来たりする。

「シッ、誰か来た・・・」

前者なら問題ないが、後者だったら面倒くさい、というかヤバい。
暴れていた二人もぴたりと動きを止め、階段を上がる足音に顔を顰めると臥せるように身を隠す。
しかしそんな心配も杞憂だった。
ギィ、と重い音を立ててドアが開いた後に続いて聞こえたのは「わぁ・・・町の遠くまで見える・・・」とかわいらしい声だったのだ。
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