詰襟セーター7


さっき閉まったドアの前、大きな人影、そのてっぺんに揺れるポニーテール───慶次さん。そうだ、この人は慶次さん。
部屋を出て行ったはずの慶次さんがすぐそこに立っている。

きゅっ、と呼吸が止まってしまったまことの瞳がぶわりと見開かれた。
慶次は真っ赤に染まった顔にポツポツと大粒の汗をかき、口元を手で覆い立ち尽くしていたが、まことと目が合うとごくりと喉を鳴らしてその手を伸ばし一歩足を踏み出した。

「あ、えっと、その、まこ・・・俺、覗くつもりはなくて・・・で、でも、これって、」
「う、あ、ひ、や、」

ぎ、と慶次の重い体重をゆっくりと受け、床が軋む。
見開いた瞳にじわじわと涙の膜を張らせて顔を赤くしたり青くしたりと忙しないまことは、近づいてくる慶次から逃れるようにベッドの上で丸くなる。

「まこ・・・なぁ、顔、上げて・・・俺に見せてくれよ・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい、慶次さん、ごめんなさい、ごめんなさい、」
「なぁに謝ってんの。まこ、まこ、ほら、見せて」
「こんな、こんなの、け、慶次さんが、い、いるなんて思わなくて、こんな、気持ち悪い、こんな、・・・っ!」
「気持ち悪いって何だよ。俺の事・・・思ってシてたんだろ?」

ぎしり、とベッドのすぐ傍の床が鳴った。
はぁ、と何かを押し殺したようなため息がまことの髪を揺らし、縋るようにきつく胸元に抱きしめていたセーターがずるずると抜かれてしまう。

「あっ、ああ、」
「こんな服じゃなくて俺がいるじゃん。まこ、ほら、顔上げて」

腕からすり抜けて行くセーターを追いかけるように、思わず顔を上げるとすぐ傍に瞳をキラキラさせたいつもの慶次がいた。
頬が少し赤いものの楽しげに満面の笑顔を浮かべて、ほら、こっちにきなよ、と大きく腕を広げる。
しかし一向に小さく蹲ってこちらをおどおどと伺ったまま動かないまことに、慶次は頬を掻くとまことを同じ目線になるようにしゃがみこむ。

「まこ。俺の方こそ覗いちまってごめんな?でも俺も・・・俺もまこと同じ事、しようとしててさ」

はは、と笑いながら恥ずかしげもなく告白する慶次に、まことはピクリと肩を揺らし、もじもじと身を揺らす。

「それにさ、まこはぜんっぜん気持ち悪くない!俺を思ってシてたって知って正直嬉しかったし・・・俺がここに戻ってきた理由の方がヤバイって!・・・なぁ、聞いても引かないでくれる?」

揺れる視線を慶次と合わせて、まことが小さくこくりと頷くと、慶次はそっとまことに近寄って真っ赤な耳たぶの産毛を撫ぜるように耳打ちする。

「一人エッチ、見せ合いっこしようって誘おうとしてた」

これでも引かない?と小さく笑う声には熱が混じっていて、まことの耳朶を擽るように撫でて行く。

「まこの下、閉じてただろ?あそこ開いたらどうなってんだろうとか、胸だってもっと見たかったし・・・触りたかった・・・ああ、触りたかった。もっと、身体中見て、触って・・・まこ・・・」

神経を研ぎ澄まさせていた耳朶に、ぬるりとした熱いモノが触れた気がしてまことは「ひぁ!」と飛び上がる。
思わず背筋を伸ばして正座をすると、すぐそこに満面の笑顔の慶次いた。

『けいじさん・・・すごく、なんか、』

いやらしい。いやらしい顔をしている。と思った。
かっこいい笑顔も、キラキラした瞳も、キュッと上がった口角もいつもと変わらないのに、なんでだか自分をジッと見つめる雰囲気がとってもいやらしい。

「まこ・・・もう一回、見せてくれよ・・・」
「ぁ・・・でも、でも・・・でも・・・ぁ・・・」

パジャマの上着でギリギリ隠れている下半身はぐっしょりと濡れている。
それにチロリと確認すると胸だって乳首が大きく育ってきてしまっているではないか。
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