詰襟セーター4


「んっ、んっ、んっ、っぷ、ぁ、」

重いペットボトルから上手くお茶が飲めず、まことの唇の端からはお茶が零れ、白い首筋に濡れた筋を作っていく。
その筋を見て慶次はまたゴクリと喉を鳴らしてしまい、それを誤魔化すように幾度か咳払いをした。

「・・・でも、まこは変わってんなぁ・・・普通胸の方が抵抗ないだろ?」
「・・・そう、ですか?・・・僕、男の時からちょっと、胸、変で・・・コンプレックスだったんです・・・」

首筋を流れたお茶は深い胸の谷間に零れ入ってしまい気持ちが悪い。
慶次の前でそれをどう拭おうか、とティッシュで口元を拭いながら考えていたまことに「コンプレックス?何?どしたの」と意外な程心配そうな慶次の声がかかり、慌ててたいした事じゃないんです!と首を振る。
しかし慶次は「・・・他の奴らには黙っててやるからさ。俺には何でも相談してくれよ」と神妙な顔でまことににじり寄ってくる。

「その、僕、ち、ちく、び、が、へこんでて、」
「へこむ・・・ああ!陥没してんのか!はは、大丈夫だって!俺の知ってるオバちゃんとかも、陥没してたけど子供できて、お乳やってたら出てきたって言ってたし!ってか俺の前で普通そういう事言うかって話だよな!」

でもさ、だからまこも気にすることはないって!と何が大丈夫なのか分からないがこちらを元気付けるように笑う慶次に『へこんでいて、そして視線を感じるだけで大きくなってしまうんです』とまでは流石に言えず、まことも曖昧に笑顔を返す。

「・・・なぁーに、そんなに気にしてんの?それじゃやっぱちょっと俺に見せてみなよ」
「え?!や、やです!」

サッとパジャマの胸元を隠すまことに慶次は「だいじょーぶだって!俺に恥ずかしがる事なんてなーんにもないだろ!」と優しい笑みを向け、どっしりとまことの前に座り込むと腕を組む。
その体勢が余りにも堂々としていて、何を言っても聞いてくれない風で、まことははくはくと口を開閉しておろおろと視線をさ迷わせる。
いつもならまことが困ったり、焦ったりすると慶次が助け舟を出してくれるのだが、今回はにっこりとした笑みを浮かべてこちらを見つめているだけだ。
慶次の梃子でも動かない様子を見て、お茶でじっとりと湿った胸元を握り締め、まことは意を決してこくりと頷く。

「す、少しだけ、ですよ?」
「わかってるって!」

にこにこと笑う慶次の視線を受け、ボタンにかかった指先は小さく震えていた。





まことは震える指でプチン、と最後のボタンを外すと、慶次から顔を反らして目を瞑り、そっとパジャマの袷を開いていく。
目の前の慶次が小さく息を飲んだ音がした。
布の圧迫がなくなった胸がたぷんと揺れ、外気の温度差で濡れた谷間がすうすうとするのにまことは小さく身動ぎをする。

「・・・っ、も、もう、いいですか?」
「えっ?!早っ?!い、いや、まって、もうちょっと、」

ジリ、と乳房の先に熱い視線を感じる。
慶次さんが今、自分の胸を、乳首の穴を見ているのだ、と思うと胸の先から下腹部にかけてツキンとした痛みに近い快感が走り、まことは反り返りそうになる背筋を必死に堪えてパジャマを握る手に力を込める。
ジリジリが止まなかったら、このままもうちょっとしたら、絶対に乳首が勃起してしまう。
そんなはしたない乳首を見て慶次さんは何て言うだろうか?それでもまだ「大丈夫、恥ずかしくない」なんて言ってくれるのだろうか?
涙が浮いた瞳をうっすらと開きチロリと慶次を伺うと、熱心な目をして食い入るように自分の胸の先を見つめていた。
ふ、ふ、とかかるのは吐息だろうか。
熱い吐息、慶次の唇から漏れたものが自分の乳輪にかかっている、と思った瞬間、今度こそ耐えられずにまことはビクリと身を揺らした。

「っ、ン、」
「──っ、あ、まこ、いや、だ、大丈夫だって!」

目の前で揺れた乳房にそこに見入っていた慶次も慌てて顔を上げ、涙目のまことに気づくと「大丈夫!恥ずかしくない!全然おかしくないって!」と幾度も首を振る。

「でかいし!すっげー柔らかそうだし!大丈夫!こんなおっぱい馬鹿にするヤツなんていないって!自信持ちな!」
「・・・慶次さん・・・ありがとう、ございます・・・」

慶次の力強い励ますような声に、まことはまた違った種類の涙で瞳を潤ませる。

「ここだって、ピンクの所がぷくってしてて超エロいし・・・先っぽ、穴開いてる所も見てるとなんかヒクヒクってしてっぶあ?!」
「も、もうだめです!胸はおしまいです!」

はぁ、と熱いため息を吐いてまことの乳首を再び見下ろし、何事か言い始めた慶次の顔に、まことは慌てて近くにあったクッションを押し付けて視線を隠す。
何て恥ずかしい事を言うのだ。と頬を赤らめたまことだが、ボタンを留める指先はもう震えてはいなかった。
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