詰襟セーター2


それがどうしてこうなってしまったのか。


まことはパジャマを着込み、自室の真ん中で体育座りをしたままもじもじと身体を揺すり、幾度も床に置いたクッションの位置を決め直し、はぁ、と何度目かになるため息を吐く。

「慶次さん・・・」

ため息を吐きながらつぶった瞼の後ろには慶次のにこやかな笑顔が写った。
本当に、どうしてこんな事になってしまったのか。
ああぁ、とまた深いため息を吐いて、まことはたわわな胸を潰しながらその場で丸く蹲った。
短い髪から覗く耳たぶは真っ赤に染まっている。

───慶次さんに、女の子になった自分の身体を見せると約束してしまった。

借りたセーターのお礼に何かをプレゼントしたい、次の休みに新しい上着を買ってくるのでその時一緒に探してくる、と提案したのはまことだった。
「ええ?俺の服ずーっと着ててもいいのに!それに俺とまこの仲だろ?お礼なんていらないって!」と笑いながら遠慮をする慶次にしつこく食い下がったのもまことだった。
何でも構わない、欲しいものがあったら言って欲しい、というまことに「ええぇ〜?なんでもいいって・・・。なんでも・・・なんでも・・・・・・。あ!それじゃ俺、まこのそのでっかいおっぱい、生で見てみたいなぁ〜・・・なぁんて!」と冗談混じりに返した慶次の言葉を真に受けて、真っ赤に顔を染めて黙りこくり、空気を微妙なものにしてしまったのもまことだった。
恥ずかしげに俯いて項まで桃色に染めたまことに、はははっ、はは、はは・・・と笑っていた慶次の声が段々と小さくしぼんでいき、最後にゴキュン、と喉の鳴る音がした。
その音に肩をヒクつかせたまことに慶次は慌てて弁解しようとしたが、「うそ!嘘だって!冗談!」と慶次が声を上げるよりも一瞬だけ早く、まことがこくりと小さく首を縦に振ってしまったのだった。

自分が肯定した事なのに「そ、それじゃぁ今晩、消灯過ぎたら部屋に行くから!」と走り去る慶次の後姿を見送ってから、まことはずっと心ここにあらずといった様で、深くため息を吐いたかと思うと突然顔を赤くしてぶんぶんと首を振り、幸村や佐助におおいに心配されてしまった。

なんであの時頷いてしまったのか。
慶次さんが見たいというのなら、元は男同士だし、恥ずかしがらずに裸くらい見せてもいいじゃないか、という思いがあった。
そして、その「男同士」という言葉を言い訳にした酷くいやらしくて浅ましい自分の欲望が疼いたのにも気が付いていた。

─慶次さんに自分の身体を見つめられる─

あのキラキラとした瞳が自分の肌を見る、と想像しただけでゾクリとしたものが背筋を走った。
それはとてもいやらしくて、素敵な事のように思えたのだ。
でも、胸を見たいと言っていた。
乳首を見られたらどうなるだろう。いつもは引っ込んでいる乳首なのに、きっと固く勃起してしまうに違いない。
ソレを見た慶次さんはどう思うだろう。元は男の癖に視線だけでこんなに固く乳首を勃起させて、まこは何てイヤらしい変態だ、と思うだろうか。
でも今は女の子なのだからきっと・・・でも元は男で・・・。

「・・・ううぅ・・・」

自分の事を「変態」と罵倒する慶次と、あちらの慶次のように「かわいい」と言ってくれる慶次、二人の慶次がまことの頭の中をぐるぐると回り、結局はまた大きなため息を吐いて「どうしてこんな約束しちゃったんだろ・・・ばか・・・僕のばか・・・」とまことは一時の欲望に身を任せてしまった自分を責め続ける事しかできなかった。
- 41 -
[*前] | [次#]
ページ:

トップに戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -