東館二階南男子トイレにて1


まことはここ最近、どうにもこうにも身体の内に溜まる熱に翻弄されていた。
それというのも先日浴場で政宗と佐助にいかがわしいイタズラをされ、『女の子のおちんちん』である『クリトリス』という箇所を発見したのと、その時からやっと、持て余し気味だった女の子の身体を受け入れ始めたせいであった。

自分は女の子になったのだから、男の子とこういう──こういういやらしい、性的な関係を持ってもおかしくない。

もう自分は同性愛者ではない、という免罪符を手に入れた事に気が付いてしまった。
男の人のいやらしい視線を浴びて、乳首を固くしてしまってもおかしくない。
男の人のペニスを想像して、じくじくと下腹部の奥を切なく疼かせても気持ち悪くはないのだ。

が、しかし頭ではそう思っていても心はなかなかそれに追いつかず、佐助や政宗にいたずらをされる度に条件反射で拒否をしてしまうし恥ずかしくて逃げ出してしまう。
更に片倉先生と「みだりに異性に身体を見せない・触らせない」と約束だってしたのだ。
渇!と鬼の形相をして自分を心配していた小十郎を思い出し、まことは今日も「まこちゃんの乳首、大きくしてあげようか?」「まことの小さいペニス、皮剥いてやろうか?」と囁いて胸を、尻を揉もうとする魔の手から、ともすれば身を委ねてしまそうな程火照る身体を守るため、放課後の廊下を猛ダッシュで逃げ回っていた。



「っは、っはう、もうっ!このままじゃ、またっ、片倉先生に・・・怒られる・・・っ!」

下着を付けていない胸は、走ると跳ねて千切れてしまいそうな程痛い。
荒い息のせいだけではなく激しく上下する胸を、ぎゅう、と両手で抱え、じぃんとした痛みにまことはとうとう小鹿のように駆け回っていた足を止めた。
このままここで止まっていたら、あの二人に見つかってしまう。そうしたらいやらしい事をされて、また片倉先生に怒られる。
青白い静電気を瞬かせる鬼の寮監督を思い出し、涙目になったまことはおろおろと周囲を見回し逃げ場所を探す。

このまま一人で逃げていてもいつかは捕まってしまうだろう。そうしたらきっとこの悶々としている身体では、いやらしい事をされてしまって逃げ出せない。なら、今の内に片倉先生やあにきに助けを求めて──。

はふ、はふ、と乱れた息を整え、どうやってこの苦境を脱するかを考えていたが、廊下の曲がり角の先から二人の自分を探す声が聞こえ、まことはきゅうっと息を呑む。

「まこちゃーん!イジワルしてごめんって!もう暗くなるから寮に帰って飯でも食べようぜー?」
「まこと、出てこねぇと今晩解ってるんだろうなぁ!」
「・・・あのさー、伊達のダンナがそういう事言うからまこちゃんが警戒するんだっつーの!ったく・・・」

壁に背中をつけ、小さく身を縮こまらせ、二人のやり取りを聞く。
軽い脅迫混じりの政宗はともかく、優しい声で心配そうに謝っている佐助だって、その実自分にイタズラをしないとは言っていないのだ。

『ここで見つかったら絶対変な事されるに決まってる・・・!』

どうしよう、どこに逃げよう、と近づく二人の声に慌てるまことは自分の背後から伸びた腕に気が付くことなく、大きな手の平で口元を覆われるとすぐそばにあった男子トイレへと連れ込まれた。
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