平成にやってきた猫武将達2


まぶしい光に目が慣れてきて、小十郎の肩越しに気配を覗くとそこには一人の女が立っていた。
でかい。猫から見ると人間とはこんなにでかく感じるものなのか。

「は・・・!破廉恥でござる!!!」
「・・・旦那ぁ、こんな時までそれかよ・・・」

そして、シギャー!と叫ぶ真田の言うとおり、部屋に入ってきた女は奇抜な格好をしていた。
面は美しい、と思う。
真珠の粉でもたたいたのか、瞼も頬も唇も、室内の明かりをきらきらと反射させる化粧をしていて、とにかく目を引く。
髪は真田に似ている甘茶色で胸のあたりまで伸びていて、幾房かに纏まりくるくると弧を描いている。
上半身を包む白い南蛮の服は、上杉のくのいちの忍装束とまではいなかいが、大きな胸元を強調するように大きく開いている。
さらにそこに視線が行くようにする為か、光り輝く金剛石が細い鎖で繋がれているのも洒落ている。
しかしもっとも注目するべきは下半身だ。
形の良い足にはなにか薬でもつけているのだろうか、光を反射して艶めいている。
その足が、腿の半ばまでスラリと露出され、黒の腰巻の裾は華麗な布でビラビラと装飾されていた。

「so good・・・!」
「う〜ん、いーい女の人だねぇ!」

いい女だ。奇抜だが、美しい。
後ろで前田のがヒュゥイと口笛を吹いた。
それは「にゃぁん」という高い猫の声になり、それを聞いた女は長い・・・長すぎるのではないかという睫をパチパチと瞬かせながら、くねくねと身を捩る。

「やーん!ねこちゃんがいっぱいー!かあわいいん!にゃんちゃん達、どこからきたんでちゅかぁー?」

女は一番手前にいた小十郎に近寄ってきた。
自らも四つんばいになり、うちちちちと舌を鳴らしながら指を伸ばしてくる。
その指は白く、傷がひとつもないどころか爪が尋常ではない桃色に輝いている。
こんな所にも薬を塗っているのか。
この女はどこもかしこも煌めいている、と感心している所に、小十郎が「女がはしたねぇ真似してるんじゃねぇ!!!」と、一つ怒声を上げた。

「oh!」
「いいねぇ!いいねぇ!」

胸元が開いた服を着て四つんばいになっているので服の中が丸見えだ。
白い首元から大きく膨らんでいる胸の谷間、その乳房を包む邪魔な黒い布、ゆらゆらと揺れる金剛石。
それに見惚れた小十郎は照れ隠しかはたまた本当にそう思っているのか、鼻先まで来ていた桃色の指に牙をむいて「シャアアアァ!」と吼えた。

「シャーにゃんでちゅか!怖くないでちゅよー?」

しかし女はたじろぐことなくそっと指を小十郎に近づけてゆく。
自分の前に立つ小十郎はその場から動くことも出来ず、また女の指に傷一つなく、丁寧に手入れされている事に気付いているのだろう、牙を剥いても噛み付く事に戸惑って伸ばされる指を喉を反らせて避ける事しかできない。

「怖くない…ん、いい子、いい子・・・」

とうとう女の指先が小十郎の右耳の付け根に到達した。
しゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくと小刻みに耳元を掻く指。
小十郎の耳と肩と尾がピピッと伸び、それから諦めたように段々としぼんでいく。

「きもちぃでしゅかー?んー、いい子でちゅねー・・・あぁん!やだぁ!こっちのでぶちゃんもかぁわいいんーっ!」

小十郎に満足したのか、女は次にどでんと横になっている前田の風来坊を見て、蕩けそうな笑みを浮かべる。
女の胸元に鼻の下を伸ばしていた前田は、がばり、と覆いかぶさってきた女をどうすることも出来ず、そのまま豊満な胸に抱きかかえられてうりうりとほお擦りをされてしまった。

「やーん!でぶちゃんふわふわー!アタシ虎模様のねこちゃんなんて初めて見るぅー!かわいー!あーん!もう食べちゃいたいっ!」
「あはは!くすぐったいって!あはは・・・は、・・・ちょ、ダメだぜ!そんな!皆が見てるって・・・うっぶ?!」
「ん?!なぁ?!は、ははははははっ、破廉恥でござるうーっ!!!」

そのまま女は前田の頬を両手で挟み込み、ぶちゅ、と唇に吸い付いてまた身をくねくねと捩る。
ちゅぽん、と唇を離し、ぐてんぐてんになっている前田の首元に鼻を埋めながら、フギャー!フギャー!と叫ぶ真田に指を伸ばす。

「茶トラちゃん、だーめーよ?そんなに大きな声で鳴いちゃ!ここペット禁止なの!」

め!と真田の鼻先に桃色の指が触れようとした瞬間、その間には猿が割り込み、なぅん、と甘えた声を上げて指先にカプリ、と噛み付いた。

「はいはーい、旦那はアンタみたいな女の耐性ないからね」
「ぁあん、もう、ミカンなねこちゃんったら甘えちゃってぇー!かあわいいん!」

そのまま猿はゴロゴロ、と指先になつきながら、酷く覚めた目で女を見上げる。
そうだ、この女がこの部屋の主だと言うのなら、自分達を連れてきたのも・・・と女を振り返ると、蕩けた顔をした女は猿の耳元を掻きながらこてん、と小首を傾げたところだった。

「・・・でも、ねこちゃん達、どこから入ったの?誰かに連れてこられたの?」
ピシリ、とゴロゴロ喉を鳴らしていた猿の動きが固まり、先ほどの小十郎と同じくはぁ、と肩を落とす。
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