平成にやってきた猫武将達1


政宗は恐ろしい夢を見ていた。
何か大きなものに押し潰され、もがいてももがいてもそこから抜け出せず、次第に息ができなくなってくる。
それなのに鼻につくのは嗅いだ事のない芳しい匂いで、辺り一面美しい花畑が広がっているのだ。

「shit・・・!」
クソ、と悪態を付き、霞がかかりそうな頭を振ると周囲に白く小さな花弁が舞い上がる。
青い空、色とりどりの花、舞い散る花弁、芳しい匂い。
脳裏の奥に焼き付く程の、そのあんまりにも儚く美しい光景を横目に、政宗は薄れる意識の中最後の足掻きとばかりに自分の上に乗ったモノに思い切り爪を立てた。
バリリリリリ、とその感触が思ったよりも深く相手の肉に食い込んだと感じた瞬間、「いっだーっ?!」とどこかで聞いた事のある叫び声が周囲に響き、政宗はやっと目を覚ますことが出来たのだった。



「で、これは一体どういう事なんだ?」
「ええー?俺に聞かれても困るって片倉さん!俺はさっきまで利とまつねえちゃんから必死で逃げてて・・・アレ?そんでどうしたんだっけかな・・・」
「あはー、俺様達も特に何かしてたワケじゃないし?ていうか俺様久々の休暇でゆっくりしてる時だったし?むしろこっちがどういう事が聞きたいかなーみたいな?」
「む、む・・・、しかし、この、尻尾と、いうものは、中々に・・・面妖な・・・」
「Stop it!真田幸村ァ!テメェ、俺の尻尾に何をしやがるっ!」



政宗が目を開けると、そこは見たことのない場所で自分は猫になっていた。
自分だけではなく、小十郎に何故かいる真田幸村やその忍の猿、前田慶次までもが猫になり、一同に尾を膨らませ、牙を向き、フー!シャー!と叫び合っていた。
フー!シャー!という猫の威嚇する声が、なんでだか「武田の?!こんな所で何をしてやがる!」という小十郎の怒鳴り声と「それはこっちの台詞ってね!なぁんでアンタ達とこんなワケ分かんない所にいるのさ?っていうかこの姿って・・・一体どういう幻術?」という武田の猿の声に聞こえ、それからその牙を向く猫だったものも、だんだんと小十郎と猿に見えてきた。
小十郎は見事な体躯をしたサバトラ、対する猿は橙色の毛並みの猫、その猿の膨らんでタシンタシンと床を叩く橙の尾をしげしげと見つめる茶トラは真田幸村だろうか。
「イテテ・・・」と情けない声がして、政宗が横を見るとそこには大きく太った虎柄の猫になった前田慶次が情けない涙目で引っ掻かれた尻を舐めている。

「What happened?なんだこりゃぁ・・・」

見下ろす自分の手も光沢のある青黒い毛に、桃色の肉球、鋭い爪がついた獣のものだった。
そういえば、と目元に手をやるとそこには変わらず眼帯が付いており、細かい幻術をかけられたものだ、とこんな状況だが少しだけ感心した。

「ひでぇよ独眼竜・・・って、俺なんで尻なんて舐めて・・・、尻・・・尾・・・?・・・猫ぉおお?!俺、猫になってる?!」

フー!シャー!という声の中に、前田慶次のフギャー!という叫び声が混じる。
それに「Shut up!」と怒鳴り返すと、猿の尾にじゃれていた真田がハッとした顔を上げて「政宗殿オオオオ!!!」とこちらに飛び掛ってきて、後はフーフーニャンニャンシャーシャーと事態の収拾はつけられなくなってしまった。


どのくらいの時間がたったのだろうか、収拾が付かなくなった場を収めたのは、どこからか響く固い足音だった。
混乱して騒ぎ立ててはいたものの、お互いにどうやら立場は同じ、何故この見知らぬ場所にいるのかも分からなければ、何故猫の姿になっているのかもわからないのだ、と理解し始めていた。
そこに現れる第三者。こいつがきっと何かを知っているはずだ。
それぞれに猫なりに構えを取り、カツン、カツン、と聞きなれぬ足音の響く方をジッと見やる。

すぐそこでガチャリ、と固い音がして、外の空気と共に人が一人入り込んできた気配がした。
猫になったおかげで暗い室内でも視界がきき、自由に動き回れるのがありがたい。
人の気配が自分達のいる部屋のすぐそばまで近づいてきたのを察知し、武田の猿が天井に張り付きいつでも飛びかかれるように、く、と身を屈めたのが見えた。
緊張する室内。
だが、佐助が部屋に入ってきた人物を襲う前に、一歩早くパチ、という軽い音と目を射すまぶしい光が政宗達を襲ったのだ。

「ちょ、まぶし・・・」
「shit!目がっ・・・!」
「政宗様っ!」

フギャ、と誰のものともつかない声が上がる。
やられた、とそれぞれが臍を噛んだ瞬間、

「にゃーーーーーん!!!」

と女の叫ぶ声が聞こえた。
- 1 -
[*前] | [次#]
ページ:

トップに戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -