Pets!5


穴に落ちた真田の旦那と鬼の旦那を追いかけてみれば、松永だけれども松永ではない男の屋敷に飛ばされて、そこはどうやらイセカイと言う今までいた戦国の世とは違う所だと言う。
俄には信じがたい出来事に、佐助は丁重に案内された南蛮風の部屋の隅でジッと俯き、頭の中を必死に整理していた。

「お、見てみろよ真田!これもすげぇぞ!」
「おお!天井のからくりと同じでござるな!紐を引くだけで明かりが灯るとは・・・!しかし火が点いた様子もないが・・・。むむ、まことに奇妙なからくりでござる・・・」

「・・・って、なんで二人ともそんなに楽しそうなのさ!あーもう旦那もそう気安く物を触らない!鬼の旦那も何してんの!それ人ン家のだぜ?!価値もわかんないのにいじくりまくって、壊したらどうすんのさ!遊びに来てるんじゃないってのに・・・ここがどこだかも分からないんだぜ?」

「ホント、これからどうすんの」と唇を尖らせた佐助に、幸村は開こうとしていたベッドサイドテーブルの引き出しから手を放し、ぐっと押し黙る。
しかし、ステンドガラスで出来たベッドランプをひっくり返していた元親はそんな佐助を鋭い隻眼で見下ろしフン、と口角を上げる。

「ウダウダ悩んでも仕方ねぇだろうが。来ちまったんだから仕方ねぇ。帰る時までに知らない世界の知らない技術を学んで、少しでも何かの足しにすりゃいいじゃねぇか。言ってみりゃぁ、これは遊学ってやつだ」

そして早速ランプの傘を外してポキン、と不吉な音を鳴らした元親に、佐助はピクリと口元を戦慄かせ拳を握り締めた。

「俺様はあの穴に近寄るなって言ったのに、アンタと真田の旦那が迂闊に近寄ったからこうなったんだろ!いつ、どうやって帰れるかもわからないってのに、『来ちまったもんは仕方ない』って、よくもそんな事が言えるよ!ったく、これで一国一城の主だってんだから西海も随分お気楽なモンだね・・・!」

佐助の小言に顔を顰めた元親は、しかし多少は責任を感じるのか、自分の隣で「佐助、悪かった・・・」と小さくなった幸村の肩を組み、「ま、確かに俺も悪かったけどな!」と頭を下げた。

「でもあの松永もこっちの世界じゃ人が良さそうじゃねぇか。丁重にもてなすとも言ってたしな。まぁ、しばらくやっかいになりながら元の世界に戻る穴を探すとしようぜ!なっ!」
「うむ。・・・佐助、巻き込んでしまって本当にすまないな。だが長宗我部殿の言う通り、ここは松永殿の肩を借りるしかなかろう」

人が良さそう?アレのどこがだよ・・・と、去り際に垣間見えた、松永の何かを企んでいた表情を思い出し、佐助は大きなため息を吐く。
確かにいい部屋に通されたものの、外に繋がりそうな扉も壁についている透明な障子からも、怪しげな気配を感じて迂闊に家捜しもできやしない。
おそらく風魔もどこかに忍んでいるのだろう。

そうしてまた黙ってしまった佐助に二人はしばらく大人しくしていたが、見た事のない物で溢れかえった部屋に好奇心を止めることが出来ず、あれはなんだ、これはどう使うのだ、と机を開け、クローゼットを開き、仕舞いには肩車をして天井の照明を覗き込む。
かつて触れた事がない程に軽く、あたたかな布団が用意されていたが、それに入ることもなくまんじりと夜は過ぎ、佐助の勘が訴えていた嫌な予感が的中するのは翌朝、早朝の事だった。
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