Pets!2


しばらく思索していたようだったが、ぽつり、ぽつり、と三人が語り始めた話はまるで物語のようだった。
戦国時代、戦国武将、戦、バサラ技─。
見慣れぬ不思議な穴があり、それを調べようと触れた瞬間に引きずり込まれ、この屋敷で倒れていたと言う。
とんだ空想話だと笑うことも出来たが、しかし先程感じた瞳の雰囲気、後退りたくなる空気を思い出し、意外にこれはひょっとするのかも知れないと楽しげに口元を緩ませる。
そうして三人の話を聞き終えた松永が語る、現代についても三人にとっては物語のような話だったのだろう。
瞳を瞬かせながら信じられないとばかりに自分と風魔を見比べ、己の体を拘束しているガムテープ、エントランスのインテリアを見て小さく首を振るった。

「・・・そんじゃあテメェは松永じゃねぇって言うのかよ」

ギラリ、と隻眼を光らせ長宗我部元親が呟く。

「ああ、私の名前は松永久秀だが、卿達の知る『松永』ではないようだな」
「んじゃ、そっちの風魔の旦那も俺様の知る『伝説の忍』の風魔の旦那じゃないってワケ?」

忍だと言う迷彩の服装に橙の髪をなびかせる猿飛佐助が、地べたに横たわりながら隣に立つ風魔を見上げる。

「どうだ、風魔?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・だ、そうだが」
「へぇ、なるほど・・・って、ぜんっぜんわかんないし!」

アンタはどこに行っても無口なんだねぇ、と呆れた声を漏らしながら、風魔の長く伸ばした前髪の下の瞳を覗こうと体勢を変えようとして、その背中をずっと押し黙っていた真田幸村に乗り上げられる。

「ぐへっ?!ちょっと、だ、だんな、おも、」
「みらい・・・ここは先の世だと申すのか・・・っ!御館様、武田の行く末を其方は知っていると・・・!御館様は!武田はこの先の世で存続しているのか?!」

その言葉に長宗我部も猿飛もハッと顔を上げ、押し黙ってこちらを見つめる。
期待と不安が入り混じったその瞳の色に、松永はふむ、と指先で顎を撫でながら自分の知る日本の史学を思い出そうとし、すぐに止めた。
面倒だったのもあるし、ガムテープが剥がれた真田の顔が、随分と端正なのに気が付いたせいでもある。
しげしげと見直すと、長宗我部も、猿飛も随分整った顔立ちと逞しい身体を備えているではないか。
瞬間、松永の脳裏にピン、とある良案が浮かぶ。

この三人を、あの毎日退屈しているだろう甥にプレゼントしてやったらどうだろう。

今頃熟睡している甥のかわいらしい寝顔や、自分の贈り物を見て歓喜するだろう顔を思い浮かべ、今度はつい口元に浮かんでしまいそうになる笑みを隠す為に口元に手を当てる。
その案は考えれば考える程にいい提案で、この三人が、語った通り別の次元から来た者なのか、はたまた妄想激しいだけなのかはもう松永にはどうでもよい事に成り下がってしまった。

「すまない、訂正しよう。ここは卿のいた世の先ではない。先程の話に聞いたバサラ技やら属性など、この世界では存在しないものだ。なので私は卿の仕えていた武田がどうなったのかは与り知らぬ。いやぁ、結構結構、卿達は異世界人というわけだな。我が家にようこそ、異世界人殿。しかし異世界からおいでなすったとなれば行く当てもないだろう。この屋敷にしばらく滞在すればいい。いやなに、部屋は余るほどあるのでな。今晩はもう遅い、客間を用意するから休まれよ」

はっは、と態とらしく笑う松永を見つめていた三人は、一瞬きょとん、と目を瞬かせた後、また一斉にテメェどういう事だ、イセカイジンとは何なのだ、結局武田はどうなってるのさ、と喚き始めるが、松永は風魔に三人を丁重に・・・『丁重に』もてなす様に伝えると、早速その案を実行に移す為に背を向る。
そうしてどんな罵声を浴びせられようとも、にやにやと脂下がった笑みを浮かべたまま、二度と三人を振り返る事はなかった。
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