アリス


グレイの端正な顔が近付いてくるとすぐに柔らかい感触を唇に感じる。

何度も口づけるたびに、徐々に深くなり、角度を変えられ、舌が割り込んでくる。だんだん意識がぼやけてくるのを感じる。酸欠で倒れそうになるところで、グレイはやっと離してくれた。二人の間には繋ぐように銀色の糸が見えた。口の周りが煙草の味で一杯になる。

「すまない……苦かったよな……。」


グレイは私の右頬に手を添える。肩で息をしながらぼんやり見ると、金色の瞳に真っ赤な顔で必死に息を取り込む私が映る。


「…………大丈夫よ。」


確かに煙草を吸った後にキスをするなんて人によっては許されないかもしれない。

(今みたいに口の周りが煙草の味になるしね。)


でも私はそれでも構わないと思えた。いつも吸っている煙草の匂い、そして今感じる苦い味も全て彼の存在を表している。そう思えるのだ。


「…アリス?」


目を細め、グレイの両頬を包む。驚いた表情をする彼の唇に軽く口づけを落とした。


貴方に染めて

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