もうすぐそっちに着く。
入り口の近くで待っててくれ。



高級感漂うホテルの前だっていうのに、液晶画面に表示された文字を見て思わず笑顔になる。
私自身そして綺羅くんも毎日忙しい日々を送っているため、プライベートで会う機会が中々難しくなった。しかし今日、久々に会える。そう思うと居ても立ってもいられなくなり、仕事が終わると直ぐ様違う服に着替え、待ち合わせ時間より早い時間に着いてしまった。

綺羅くんはそれを見越したのか先程メールが来た。口の端が上がるのを感じながら、返信を送った。


分かりました!
お待ちしてます。


『送信完了』

画面を確認し、ホテルの前で再び待ち続ける。ただ待っているだけで、心がウキウキする。

私がメールを送って数分後、綺羅くんが到着した。すぐにこちらに気づき向かってきた。眼鏡と帽子を身につけ、変装している綺羅くんは新鮮だった。

思わず、大声をあげそうになるがそれを抑える。小声でどうしますか。と尋ねると、中に入ろう。と言わんばかりに私の手を引っ張る。いきなりの事で驚きながらも私はホテルの中へと吸い込まれた。


「すごい………。」


チェックインを済ませエレベーターで最上階まで向かうとそこにはテレビでしか見たことがない風景が広がる。思わず感嘆の声を上げる。

(すごい……)

部屋のあちこちを見ていると、後ろからぎゅっと抱き締められた。


「…………。」

(綺羅くん…。)

無言で私を抱き締める腕は優しく私の心を温かくしてくれる。微笑みながら、後ろに手を伸ばし短い黒髪を撫でる。それをただ受け入れる姿はウサギのようだ。
私は体を綺羅くんの方にした。少し頬が染まり、優しい表情をする彼。その全てが愛おしい。


「会いたかったです。」


そう言うと、返事の代わりに唇に柔らかい感触が。
何回も与えられる口付けに頭がぼんやりしてくる。綺羅くん。と呼ぶと、

愛してる


と耳元に囁かれた。
嬉しくて、嬉しくてただ私は彼の背中に手を回した。
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