「あれ?あそこでうろちょろしてるの七海春歌じゃない?」


久しぶりの三人での仕事のオファーが終わり、スタジオの外を歩くと、帝が指をさす、その先にはまさしくST☆RISHの作曲家である七海春歌がいた。右に行ったり、左に行ったり……。帝の言う通りうろちょろしている。


「おや、あいつらはいないのか?」

「それとも、置いてきちゃったとかぁ〜?」


ふと思いついた疑問を鳳が呟く。七海春歌の周りにはいつもメンバーの誰かがいる事が多い印象があった。其ほど彼らは彼女が大事なのだろう。

「………何か用事があったんだ、きっと」

「へぇ、綺羅が庇うなんて珍しいね。」

「それにしても困った表情、実にイイッ!」

「それなら七海春歌に話しかければいいじゃん。彼女、多分困ってるよ。」

「そうしたいのも山々なんだが、スケジュールの関係でそうする訳にはいかないんだよ。お前も次収録入ってるだろ、ナギ」

「うん、綺羅は?」

「…時間に余裕があるから」

「そう、じゃあ僕たちは行くね。」

「ククッ、まぁ何を仕出かすかは分かってるけどな。」

そういい、鳳と帝は行ってしまった。その姿を見送り、すぐに振り返る。そこには今にも泣きそうな七海春歌の姿が。

足を進め姿がどんどん近くなっていく。どうやらこちらに気づいてないらしい。

「七海さん。」

ぽんと肩に優しく触れる。

「きゃっ!」

「!!」

「………何だ皇さんでしたか。」

驚きました。と言っている彼女の瞳には溢れそうなほど涙が溜まっていた。

「どうしたんですか。」

「………困っているように見えたから…」

そう言うと、七海はしゅんとする。


「………実はキーホルダーを何処かに落としちゃって…この辺に落としたんだと思うんですけど…」

「探す。」

「え?」

「一緒に探す。」


だから

「そんな悲しそうな顔しないでくれ…」

滲み出た涙を長細い指で拭う。有り難うございます そう言いながら涙は暫く止まらなかった。


うさぎさんの落としモノ

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