「ほら、暑い。もっと早く。」 「うぅ、何でこんなことに………」 久々に呼ばれ、何か急ぎの用かと思い早歩きで学校に行き、空き教室に行くとそこには私を呼んだ張本人、比佐くんの姿が。彼は私を見た瞬間、遅い。ったく待ちくたびれたよ。と言い、何かを私に渡す。見ると、赤を強調したうちわだった―――……。 「う、うちわ??」 「そう、俺避難場所としていつも通り此所にいたんだけど、エアコンつけてても暑くてさ。 ほら、ここの学校基本28度以下にしちゃいけないじゃん。だから俺うちわ扇いでいたんだけど、腕疲れちゃって。あんた、やってくれない?」 「えええぇ!?」 せっかく駆け足で来たのに何だこの仕打ちは。 「な、何でそんな事しなきゃいけないのよ!?」 「そりゃ生徒会長から直々にあんたに学校上での俺の世話を頼んだから当たり前だろ。いいから早く扇げよ。」 そして事は冒頭に至ると言うわけだ。 (つ、疲れた……) 何時間経ったのだろうか。もう、うちわを一生分扇った気がする。両腕共くたくたになり、扇ぐスピードも自然と遅くなる。 「ん?あんた、大丈夫?むっちゃ汗かいてるけど。」 もしかして、疲れた? 流石に様子がおかしいのに気づいたのか比佐くんがこちらの様子を伺う。 「もう、何時間もやってるんだから当たり前でしょ……。」 「ふぅん……。」 次の瞬間、私からうちわを奪い取り、それをこちらに扇いでくれる。エアコンの冷たい風がうちわを通してこちらに来る。 (す、涼しい……。) うちわでこんなに涼しくなるものだと改めて実感する。このまま目を閉じて風を感じたい、そう思えた。 んじゃこうしようか。と声がして閉じていた目を開ける。 「このままじゃあんたが倒れそうだから、30分ごとに交代、でどう?」 「え?いいの?」 「まぁ、後一時間で仕事入ってるし、それにあんたの扇ぐスピードを見ると一時間も持たなそうだし。」 別にいいよ。とうちわを動かす。相変わらず気持ちの良い風がくる。 あっでも、と私の顔に近づく。なに?と言うと、 ちゅっと可愛らしい音を上げて唇が重なる。ただ触れるだけのキスに呆然となる私を見て比佐くんは意地悪そうに笑う。 「あとで、覚悟してよね。」 あぁ、やっぱり比佐くんは比佐くんでした |