「平門!!」 いつもの彼女らしくない大きくて怒りが含んでいる声。 くるり と座っていた椅子を回転させ、ドアの近くにいる彼女を見つめながら、普段通り接する。 「どうしたんだ?」 「…私の部屋の前、アレ貴方でしょう?」 震えた声が聞こえる。思った以上の反応に笑いを隠すことができなかった。そばに行くと、もうっ と言う声が間近に聞こえた。その頭に手を伸ばし動かす。 「ふふっ、で本題は?」 「捨ててよ。触るのも嫌で………」 思い出したのか語尾に近づくにつれ、声が小さくなる。 「ふむ。」 話をしながらも手を動かしていると、あまり撫でないで… と言われる。こちらとしてはもうちょっとこうしていたのだが…。名残惜しく手が離れる。 「では行こうか。」 足を動かすと後ろからついてきた。後ろの早さが早いから、こちらまで足の速度を早まる。 「ふぅ、踏まれてなくて良かった。」 「そうだな、踏まれたら処理が面倒になる。」 俺はドアの前にある、数十個ある蝉の脱け殻 を見つめる。 流石に素手は気が引けるので持ってきた手袋をはめ、その一つを摘まむ。 「ひ、平門…早く。」 見たくないのか彼女はそっぽを向き俺にそう告げる。 「結構見つけるの大変なんだぞ。」 「そんなものを見つける為に苦労しないでよ。」 俺が何故蝉の脱け殻を集めたのか、それはツクモへの悪戯のためだ。だが決意したものの、普段空を駆け巡っているからか、集めるのに苦労したものだ。 「は、早くして…」 「…………。」 捕まえるのに時間苦労ためか、手放すのが惜しい。が後ろから来る威圧感に負け、数十個ある脱け殻を適当に窓から投げた。 下から悲鳴やら何かが聞こえたのは気のせいだ (うわー!何か降ってきたぁ!) (與儀!…花礫、なにこれ?) (ん?…蝉の脱け殻じゃねーか、ざまぁ。) (ひ、酷いよぉ!花礫くん…。) |