(どうしよう……)

任務の帰り、平門と歩いていたツクモだが、休日で人通りが多いからか、人混みで平門の姿を見失ってしまった。

気づいた時にはあの目立つシルクハットの姿が見えなくなり、焦ってしまう時にはもう遅い。ツクモはただ人混みに流されていた。

(どうにかして帰らなきゃ…)

そう思い、人混みから逃れようと試みるものの、中々抜け出せない。これは困った。

このまま人混みに流されそうになったとき、

グイッ


「ッ!」


いきなり体が傾く。突然右腕が強い力で引っ張ったからだ。

倒れると思い、思わず目を瞑る。しかし何時まで経っても何処も痛みが感じられない。不思議に思い、閉じていた目を開く。

「はぁ……全く。探したぞ、ツクモ。」


「平門!」

そこに先程まで一緒に歩いていた人物、平門がいた。どうやら腕を引っ張ったのも彼のようだ。
一方当本人は、片手でツクモの腕を掴みながら、もう反対の腕で帽子のつばに触れていた。


平門に迷惑をかけてしまった。ツクモは申し訳ないと感じ、頭を下げ謝る。


「……ごめんなさい。」

平門は何も言わず、微笑みながら ぽんぽん と頭を撫でる。


「帰ろうか。」


そう言い、掴んでいた手をツクモの指に絡めた。

また迷子になったら困るからな。


行くぞ。という合図と共に歩き出す。平門の手は大きくて暖かった。

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