ちょっとした用があり平門の部屋のドアを軽くノックする。しかし、返事がない。 「……平門?」 静かに開けてみると、そこには平門の姿はなかった。 (何処かに行ってるのかしら?) ツクモは平門を待つことにした。数分待ってみるが中々戻ってこない。ふといつも平門が作業する書斎机を見ると、椅子の背に黒のジャケットが掛けられていた。 (これいつも着ている物ね…。) そう思いながら見慣れた黒を椅子から離し、触れる。 (やっぱりサイズ大きい…。) まだジャケットの主は帰ってこないだろうと思い、ジャケットの袖に腕を通す。同然のことながらツクモの身体では有り余る一方である。 (平門の匂いがする……。) いつも安心するこの匂い。ツクモは目を閉じこの瞬間を楽しんでいた。 「何やってるんだ?」 「えっ……!?」 顔だけ素早く振り返りそこにジャケットの持ち主だと理解したときには後ろから抱き締められていた。 「平門……何で……」 居たなら声かけてよ…… 「悪かったよ。しかしツクモがあまりにも大胆な事をする方が悪い。」 罰としてもう少し俺に抱き締められてなさい。 耳元で囁かれ、回る腕の力が強くなる。 「……もうっ…」 ツクモはそう言いながらも背中に伝わる間接的な体温を感じていた。 |