七松 | ナノ
オリ忍出てきます!
嫌!ダメ!無理!って方はバックプリーズ










ゴウゴウと、燃える炎を見ていた。
(実に、呆気ないものだな)
燃えているのは、つい半刻ほど前まで確かに存在していた城。規模は小さいが、軍隊が優秀なことで有名だった。それも今となっては過去の話、だが。
すでに城の中の兵たちは絶命しているだろう。火を放つ前にあらかた殺していたが、これだけの業火だ。もう息のあるものは残っていまい。それにしても……と、七松小平太は自分がたった今落とした城を眺めながら思案する。
(ここの兵は随分強いと聞いていたからどんなものかと思ったが……全然だったな。こんな奥まった山の中にあるし、強いといっても所詮集団で、攻めいる時のみの話か。城に入られるのも稀だったのだろ、城内の警備はかなり手薄だったしな。……正直、期待はずれだ)
冷静に今しがたの城の戦力を分析する。その瞳はどことなくつまらなそうで、燃える炎を見つめる瞳はその実、何処をも映していないようだった。

不意に、七松が閃いた。
鋭い金属音を響かせて、投擲された手裏剣は近くの茂みに突き刺さった。七松の手には苦無。飛んできた手裏剣を苦無で弾き飛ばしたのだ。
ぎらり、七松は鋭く周囲を見渡す。
ガサリと音を立てた茂みに瞬間的に手裏剣を放ち、向かって駆け出す。
現れたのは漆黒の装束に身を包んだ男。振りかぶった苦無を叩き込めば、忍刀と交わって鋭い音を立てた。
(プロ忍者か……!)
素早く敵と距離を取るために後ろに飛ぶと、右側から殺気。
(一人じゃなかったか)
七松がもう一度辺りを見回すと、幾人か、最初の黒装束と同じ格好をした男たちがわらわらと七松を取り囲んだ。
敵は八。纏う空気はみな同じ。
(……だが、勝てない敵ではない)
七松は、瞳をギラギラと光らせて、ニヤリと笑んだ。
「ちょうど、退屈してたんだ」
突然喋りだした七松に、周囲の男たちは色めき立つ。
「……楽しませてくれよ?」
言うが早いか、地を蹴った。










「ハァッ、ハァッ……」
七松の荒い息が響く。周囲には八つの「かつてヒトだったモノ」が転がっていた。
訓練された忍だけに、七松にしては少し手間取ったようだった。腕や肩、頬などにいくつかの切り傷を負っていた。
パチパチパチパチ……
突然響いた拍手に、咄嗟に身構える。木の陰から、黒装束の男。
(まだいたのか……)
荒くなった息をおさめ、苦無を片手に黒装束の男と対峙する。男はまぁまぁと七松をなだめるような仕草をしながら言った。
「あぁ! 心配しないでくれ、私は君の敵じゃない。ちょっと君と話がしたくてね。……忍術学園六年生の、七松小平太くん?」
「!」
名前を呼ばれ、七松の顔が険しくなる。同時に、苦無を握る手に力が入った。
(なぜ、忍術学園を、私を、知っている?)
「お前は、何者だ? どこの城だ、名を名乗れ」
いつでも飛び出せるよう臨戦態勢を取りながら、男に尋ねる。男はうっそりと笑んで、口を開いた。
「なに、名乗る程の名はないさ。ただ今は、オニイグチ城の忍組頭をしているものだ」
「オニイグチ城、だと?」
七松はその城の名を聞いたことがあった。城主が好戦的で最近勢力が増している城で、中でも忍組はめっぽう強く、あのタソガレドキ城に負けるとも劣らない、だとか。忍術学園が友好的にしている城ではなかったはずだ。寧ろ、それらの城と敵対するような……。
(その、忍組頭……)
「そんなたいそうなところの忍組頭が、いったい私なんかに何の用だ」
純粋な疑問だった。忍術学園の七松小平太だと認識した上で、部下の仇討ちでなければこいつは自分に何の用があるのかと。
忍組頭を名乗った男は、不敵に笑んで七松に囁いた。
「君を、勧誘に来たんだ。オニイグチ城忍組に、入らないかい?」
「……なん、だと?」
「いやー君があの城を落とすところから見ていたけど、君はかなり優秀な忍びだ。ぜひ我が忍組に来て欲しい。それに、君はもうすぐ卒業だろう? 就職先が見つかったと思って来てくれないか」
「自分の部下を殺した奴に、勧誘とは正気じゃないな」
七松がそう言うと、男は辺りを見回してつまらなそうにため息をつく。
「あぁ……、彼らのことなら気にしないでくれ。いわゆる『反乱分子』ってやつさ。最近手に入れた村と共謀して謀反を起こそうとしていたから、君の実力を測るための駒にしたまでのこと。謀反を起こそうとした時点で、私の部下ではないよ」
やれやれ、といったふうに首を振る男の真意は見えない。ただ、男の言うことが本当なら、七松自身はノってもいいかと考えていた。実際、そろそろ就職を決めねばならない時期に来ている。それに、オニイグチ城は実力主義の城と聞く。己の力を持て余した七松には、もってこいだと思われた。
「あ、そうそう言い忘れてたんだけど、オニイグチ城忍組のしきたりで、忍組に入るにはどこか自分と縁のある村を滅ぼさなくちゃいけない。君は彼らを始末してくれたからね、特別だ」
そこで男は、ニッコリと微笑んだ。
「忍術学園を、潰してきて」
七松は、息を呑んだ。
「それが、君が忍組に入る条件だよ」
男は薄く微笑んで、問いかけた。
「君が入るなら、忍術学園を潰してきて。入らないなら、今ここで私と勝負だ。……その代わり、もしここで君が私と戦って、私が勝ったなら、忍術学園は我が軍が潰しに行く。さあ、どうする?」
言い終わると、男の纏う空気が変わった。七松は冷たい汗をかいているのを自覚する。
(……こいつ……強い……)
七松は、それでもニヤリと笑んで答えた。
「そんなの、決まってるだろ」
くっと強い目で男を睨みつける。
「私が今、お前を殺してそれで終わりだ! 忍術学園に、手出しはさせない!!!」
「交渉決裂、だね……」
男は背中から刀を取り出して構えた。
「それじゃあ、死合おうか」
男の声を合図に、二人は交錯した。













ピクシブにテスト投稿したやつです。
ホントはもっと違う展開になるはずだったんですが、いつの間にか小平太が学園を救ってました。こへパネェ。

20120926.
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -