君の意味を塗りつぶす | ナノ
「文次郎」 【意味】 (1)淫乱な (2)不埒な (3)サボり魔 http://shindanmaker.com/161609
現パロ高校生留文。







ギィッと不快な音をあげて開いた扉の先には、絵の具で塗りつぶしたような青空が広がっていた。
ぐるりと見渡した屋上には、授業中であるため人っ子ひとりいない。はずなのだが。
太陽の眩しさに顔をしかめながら、留三郎はある種の確信をもって、今出てきた扉の裏手側へと回った。
ひょいと影になっているそこを覗き込めば、案の定文次郎がいた。
「……やっぱりいたな、文次郎」
留三郎はため息をつきそうになるのを堪えて、寝転がっている文次郎に呼びかけた。
文次郎は実際寝ていたのか、声に反応して小さく呻き、くあっと大きく欠伸をして体を起こした。
「……留三郎か。何の用だ」
「何の用だじゃねえよこのサボり魔。お前が授業出ねえから、俺が仙蔵にどやされんじゃねぇか」
文次郎の態度に、2人とはクラスの違う過保護な彼の幼馴染みを思い出して、さっきは堪えたため息が我慢ならず零れた。立つ気はないらしい文次郎の頭をぺしりと叩き、いてえなと文句を垂れる横顔に、幼馴染み殿の小言を伝えてやる。
「お前が授業サボる度に、アイツは何を考えて授業に出ないのかだのお前同じクラスだろう授業は出るように言っておけだの、お前が授業出ねえのは俺がちゃんと見てないからだの、ひでえ責任転嫁だ。とりあえず仙蔵に付き合う俺の身にもなれ。授業出ろ」
「お前も大変だな」
「大変だと思うならちったぁ協力しろよ。不埒なやつめ」
「ははっ、それ、仙蔵が言ってたんだろ。俺も直接言われた」
不埒な、だなんて古風なことを言うのは仙蔵くらいだ。それを留三郎が言ったのが面白かったのか、文次郎はくすくすと笑う。その笑みにまたため息が零れた。
そもそも文次郎は悪い生徒ではない。留三郎が同じクラスなのが不思議なくらいには頭も悪くないし、不真面目でもない。それはむしろ留三郎のほうだ。
ただ時たま、今日のように授業をサボる。また更に、時折突拍子もないことを言い出す。仙蔵が文次郎を、不埒な、だなんて言うのももっともだと思うことも、多いのだ。
しかし留三郎はそんな文次郎のことが好きだった。周囲には犬猿などと言われてはいるが、二人は恋仲である。いつも目の下に濃い隈をこさえている恋人の、たまの休息だと思えばかわいいものだ。
「留三郎、」
くい、と引かれた手と呼ばれた名前に応えて文次郎を見る。さっきまでの和んだ空気はどこへやら、文次郎は常の雰囲気と違った、どこか艶を含んだ瞳で留三郎を見ていた。
「留三郎」
また名前を呼ばれて、ぐいっと今度は力強く腕を引かれた。
「ぅ、おっ」
バランスを崩した留三郎は、引っ張られた方向そのままに落ちていく。どさりと倒れ込んだ時には、留三郎が文次郎を押し倒すような体勢になっていた。そうしたのは他でもない文次郎ではあるのだが。
「お前だってここにいるってことは、この時間出るつもりねぇんだろ?」
留三郎の首に腕を回しぐっと引き寄せ、囁くように問い掛ける文次郎にドキリとした。安っぽい屋上の床に、あまり手入れのされていない黒髪が散り乱れているのに、酷く狼狽している己を感じて、留三郎は舌打ちしたい気分になった。
「……あぁ、まぁな」
動揺してざわつく胸を顔には出さず宥めて、無愛想に返す。存在を主張しだした心臓に気付くのに、そう時間はかからなかった。
にやにやと留三郎を見つめる思いの外大きな瞳に、またため息をつきたくなる。
「……なら、ちょっと付き合えよ」
そう言って、ちゅ、と可愛らしい音を立てて触れた文次郎の唇を、逆に自分から重ね合わせて、留三郎もニヤリと笑んだ。
「この、淫乱」
多分に笑いを含んだ声で罵れば、クスクスと笑い声の合間に、なんとでも、だなんて返ってくる。それに二人して吹き出して、また口付けた。
日陰に溜まるゆるい空気に、甘やかな色を混ぜて、二人きりの時間を塗りつぶした。


 了

















久々にこうしーん。留文書こう!と思って書きはじめてからだいぶたってる。
最後だけどうしても気にいらなくて何回も書き直した。もっと精進したい。
ってなんの感想文だよww

20111215.

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