やあみんな!素敵で無敵な情報屋さんこと俺、折原臨也。
今日は池袋の喧嘩人形こと平和島静雄、シズちゃんがウチに来ています!なぜってそれは俺とシズちゃんが恋人同士だから!
そして今日は11月11日、ポッキーの日だよ!
「シズちゃん!はい、あーん!」
通常より5割増しの笑顔で俺はシズちゃんの前にその細長いチョコレート菓子を差し出した。ソファに体育座りで座り込んでその辺にあった雑誌を読んでいたシズちゃんは、目の前に差し出されたソレを2秒ほど見つめたあと、パクッと口にくわえた。
よしきた!やるなら今だ!
反対側のポッキーを俺がくわえようとした、その時。
パキッ、ポリポリポリポリ…
「ちょっ!シズちゃぁああん!?違うでしょ、ダメでしょ食べちゃ!」
「あ?」
シズちゃんきょとんとしてるよ、わかってないなあ!
「今日は何月何日!?そう11月11日だよポッキーの日だよ!?ポッキーの日といえばポッキーゲームでしょ、世の恋人たちが1度はやるだろうポッキーゲームをおおやけに理由付けてやれる日なんだよつまりポッキーの日は恋人の日といっても過言ではないんだよそうつまりポッキーの日イズ恋人の日!」
「つまり何が言いたいんだてめぇは」
「ポッキーゲームやろうよ!」
「しね」
「ひどっ!?」
えっちょっと待ってひどくない?俺の扱いひどくない?仮にも恋人だよ、俺。「いざや、ポッキーもうないのか」そこにあるよ何箱も。って違うでしょ、そうじゃないでしょ。シズちゃん絶対拒否るだろうと思ってたけどめげずにポッキーゲームをしかけにいった俺に「しね」って!いーじゃんやろうよポッキーゲームねえ今日くらいさぁ、ねぇねぇずっとポッキー食べてないでさぁねぇねぇそんなおもしろくない雑誌とかほっといてさぁねぇねぇシズちゃんちょっとちゃんと話聞いてる!?
「だあああもううるっせぇ!やりゃあいーんだろーが!」
「えっ!」
ざっ!とシズちゃんに纏わり付いていた俺を引きはがして袋から抜き取った1本のポッキーは俺の口の中。いやぁシズちゃんったらいつ見てもイケメンだなぁ…って違うでしょ俺!
「よーいスタート」
って言ってる間になんかいつのまにか始めちゃってるしポッキー1本分の俺とシズちゃんの距離がどんどん縮まって……って近い近い近い近い!!!
唇に触れるまであと1cm、ポッキーを見ながら食べていたシズちゃんと、不意に目が合う。
どきり、跳ねる心臓。
ニヤリ、シズちゃんが笑うのが見えた。
掴まれる後頭部。
かぶりつくように俺の唇を塞いだ、シズちゃんの、
「んぅっ!――――ッッ!!」
縦横無尽に動き回る彼の舌。
砕けたポッキーがぐちゃぐちゃに混ざって気持ち悪い。俺が甘いモノ苦手だってシズちゃん知ってるでしょ?甘いあまい、チョコレートの香りにくらくらする。くちゅくちゅと唾液が混ざり合う音が卑猥だ。
息苦しくなってシズちゃんの胸をドンドン叩くけど効果なし。どころか、より深く舌を絡められた。自然、俺はシズちゃんのバーテン服に縋り付くような体制になってしまう。っていうか長いよ。肺活量もバケモノ並だったの?シズちゃん。俺ってば知らなかったよ。……酸欠で上手く頭が働かない。
くらくらする。ぐらぐらする。
「…んっ……ぷはっ!…はぁっ、は…」
ようやく唇を離してくれた時には、息も絶え絶え。はぁはぁと浅い呼吸を繰り返して酸素を取り込んだ。
目の前には、シズちゃんの顔。
ヘロヘロになった俺の様子を眺めて、不敵に笑んだシズちゃんが口を開く。
「ポッキーゲームは俺の勝ちだな」
くくっと低く笑って、ちゅっ…と軽いキスを俺の唇に落としたシズちゃんのソレは、ニヤニヤと笑いながらまたポッキーを食べる作業に入っていった。
俺はきっと真っ赤になってるだろう顔を覆ってどうやって復讐してやろうかと考えながら、どうしても緩む口許を自覚しない訳にはいかないのだった。
fin.
二人ががんばってべろちゅう描いてくれたから俺もがんばったのぜ。
20101112.