バレンタインデイ・キス(笑) | ナノ





「シーズーちゃん、ハッピーバレンタイーン」
「……ぁあ?」



 目の前に差し出されたのは、透明のナイロン袋に詰められた色とりどりのチロルチョコ。バレンタインとか言う割に色気のカケラもねぇな。
 ガサガサ、袋の鳴る安っぽい音。臨也は袋の中から1個、チョコを取り出してペリペリと開封、自分の口の中にほうり込んだ。
「うぇ、あまっ……」
 文句言うくらいなら食うな。っていうか、それ俺にやるつもりで持ってきたんじゃなかったのかよ。
「もちろんシズちゃんにあげるつもりだよ」
「もごもごしながらしゃべんな。やるつもりないなら帰れ。むしろ死ね」
「ひどいなあ。つーかシズちゃんにもあげるって、の、っ!」
「んぅっ!」
 唐突に掴まれた後頭部。頭を引き寄せられて、重なる唇。すぐさま唇を割って入り込んだ舌。口腔に広がるチョコレートが甘い。半分ほど溶けたチョコを互いの舌の間に挟んで擦り合わせる感触。ふるりと背筋が痺れた。
「ん、ふ……はぅ、ん……」
 変な気分になる前に唇を離してしまいたかったけれど、チョコレートの甘さに引き付けられる。まだ甘さを味わっていたくて、どちらのともしれない唾液で薄くなったチョコレートを追いかけるように舌を絡めてしまった。
 にやり。臨也の口角が吊り上がったのがキスしながらわかる。……くそ。
 ぢゅく、絡めた舌を吸われ、さらに口づけは深くなる。えづきそうになるほど深く舌を差し入れられ、空気の入る隙間もないくらい唇を合わせられた。窒息死するような感覚に目眩がする。
 くらくら、ぐらぐら。チョコレートの甘い香りに侵されているみたいな錯覚。
 最後、今までの激しいキスが嘘のように、ちゅっ……と小さなリップ音をさせて、唇はゆっくり離れていった。
「ふ、はっ……ぁ……」
「……ふふ、シズちゃんかーわい」
「っせぇ……かわいい、とか、言うな……」
 ぼうっとする頭を振って、甘い余韻を振り払う。にやにやと揶揄する言葉に途切れ途切れ返した。
 ちらりと臨也を見れば、クスクスとひどく楽しそうに笑って言う。
「ハッピーバレンタイン?」
 俺は多大なる呆れと少しの憎しみを込めて、臨也に返す。
「お前と一緒にいるってだけでアンハッピーだよ、バカヤロウ」

 バレンタインに、チョコレートよりも甘い甘い口づけを、だなんて、どんなベタなキャッチコピーだよ。吐きそうなくらいに甘いよな。
 それを実行するお前も、似合ってるとか思っちまった俺も!





fin.















バレンタイン@3日遅れ
相変わらずのSSSで非常に申し訳ない。
あとマンネリでごめんキスシーン書きたかっただけ。

20110217.
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