ああもうどうして私はいつもこうなんだろう。エアコンの効いた車内でため息を吐く。久しぶりの彼氏との遠出にウキウキした。美味しいものを食べて、目新しい服や雑貨を見て楽しんだ。楽しんだからこそ、充電切れを起こしてしまう。ペースを考えればいいものの、その時その時でテンションが上がってしまうからコントロールできない。充電切れを起こした後はただただ帰りたい気持ちに襲われ、喋りたくもなくなってしまう。

「可愛いスカート買えて良かったっスね」
「うん……」
「次のデートで着てくる?」
「うーん…分かんない」

もう本当に最低。何か話さなければと思えば思うほど適当な返事しか返せない。あたまと口が繋がっていない。

「…今日楽しくなかった?」
「別に、楽しかったけど」

車がいつもの場所で止まる。もうさよならの時間だ。「じゃあまた連絡する」なんでそんなに優しいの。無性にイラついた。家族じゃないのに。あんたなんか彼女なんて選び放題なのに。

「あのさ、なんで怒らないわけ?」
「は?何が」
「私のこと。明らかに態度悪いじゃん。気分悪いじゃん。黄瀬はキレていいんだよ」
「別れても…」黄瀬の目つきが鋭くなる。あ、これ以上言ったら取り返しのつかないことになる。

「名前は今日楽しくなかった?」
「…楽しかった」
「楽しすぎて疲れきったわけでしょ」
「…」
「オレといて充電切れって嬉しいじゃないっスか」
モデルらしからぬ、くしゃくしゃな顔して笑う。その笑顔がなんだかダサくて私も笑った。

家に帰って新しいスカートをはいた。パステルの黄色が揺れて彼の髪を思い出した。胸がくすぐられてあいつに会いたくなってきた。ああもうどんだけ好きなんだ。

「もしもし」
新しいスカートはいたからデートしない?