学生時代から変わったこと。月に1回マッサージに行くようになったこと。良い化粧品を少しずつ使い始めたこと。大学生を見て
若いなあ、と思うことが多くなったこと。楽しくない飲み会が増えたこと。彼氏と会えない時間が増えたこと。

新開隼人と付き合い始めたのは大学生の時。同じバイト先で働いていた。私は新開のことが苦手だったが、飲みに行ったりするうちに…というパターンだった。バイトと趣味の旅行以外の隙間は新開との時間になって、それなりに充実していた。新開は私の平凡な料理を本当に美味しそうに食べてくれるので、料理を前よりもするようになった。新開は本を読まない私に読みやすい本を貸してくれるので、読書の楽しみを知ることができた。
社会人になり、学生のように簡単には会えなくなった。それでも時間を見つけては互いの家を行き来する。会えないことが不満になったり、返事の時間にヤキモキしたりすることもあるけれど、会って新開に包まれれば気になっていたことたちはスッと消えていった。
今日は久しぶりに新開が泊まりに来る。それだけで妙にそわそわしている。早く仕事を終わらせたら、少しだけ手の込んだ料理を作ろう。あんまり洒落込んだ料理ではなくて、ホッとするようなものを。美味しいと、笑ってほしいと思う。

「ただいま」
スーツの彼に自然と駆け寄る。おかえりなさい。