立海大附属 | ナノ


▼ 本当は

「里中」

『柳……?』


後ろから声をかけられ、振り向くと優しい笑顔を浮かべる柳が居た。
手には二冊の本を抱えている。


『柳…、学校内で喋りかけるなって言ってるだろ』

「何回も言うが、俺はお前といることで何と言われようと気にしない。俺とお前の関係に口を出す奴が居れば俺が対処しよう」

『……はぁ、俺は気にするっての』


長い髪に、鋭い目つき、クールな性格。凛はそれだけで周りから不良扱いをされていた。ただただ見た目と表面の性格だけが一人歩きしている。

元々一人で居ることが好きな凛が気にすることはなかったが、そんな避けられている凛に好意で近づいてくる輩もいる。


「気にすることはない。俺はお前の中身を知っている。それで十分だ」

『あっそ。それで何か用か?』

「そうだ。これをお前に渡そうと思ってな」


柳は、手に持っていた二冊の本を凛に差し出した。
最近でた新刊のミステリー小説だった。


『なんで、俺に……』

「この作者の作品を里中が好んで読んでいる確率は99%だ。ついでに、この新刊を読んでない確率は98%。違うか?」

『確かに好きだし読んでねぇけど……。なんで、知ってる……?』

「それは聞かなくても分かると思うが?」

『……そうだな。サンキュ、読ませてもらう』


凛は柳の手から小説を受け取った。どことなく嬉しそうに小説の表紙を眺める凛を柳はじっと見つめる。


『なんだよ……』

「いや、お前は本が好きなんだなとおもってな。その気持ちはよく分かる。だが、少し、妬けてくる」

『妬く……?』

「あぁ。お前は今、本を素直に受け取っただろう。いつも、学校内で話す時はどことなく不機嫌だからな。そんな嬉しそうな顔をされては妬けてくる」

『……そんな顔、してねぇ。本なんかに妬くな。あと、学校内でそういう話は……』


柳の言葉に赤面しながら、凛は拗ねたようにそっぽを向いた。
柳はそんな凛の姿を見て、口に手をあてる。


「今の言葉で赤面する確率は100%だった。やはり、可愛いな、凛」

『なっ! 確信犯かよお前…。てか、名前を呼ぶな』

「恋人なのにどうしてだ? 」

『だから学校内ではやめろ!』


顔を真っ赤にして叫ぶ凛を楽しそうに見ながら、柳は凛の頬に手を伸ばした。

びくっとする凛を優しく撫でる。
凛が驚き、柳を見つめると、普段開かれない目が開かれていた。
切れ長の綺麗な目が凛を見据える。


「可愛いな、凛」

『〜っ!!』

凛は柳の手を払いのけ、背を向けて走り出した。
耳まで真っ赤にしているのが、長い髪の間から見えた。


「おや、逃がしてしまったか」


柳はまた楽しそうに笑い、自分のクラスへ歩き出した。

【自分の言葉でクールなお前が、赤くなるのが見たいんだ。
他の奴らなんて、その材料にすぎないのだから】





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