長安にて。

プロットあり




「ーーーあてッ!!う〜〜〜〜っ こんがらがって取れねぇやーーっ」
「どうせ邪魔なら後ろ髪全部切っちまえばいいじゃねーか」
『俺がバッサリしてやろうか?』
「……」



帰り道悟空の長い後ろ髪が小枝に引っかかってしまった。三蔵と が切ってしまえばいいのに、と提案をするもあまりいい顔をしない。




「それはヤダ」
「? なんでだよ」
『邪魔じゃなのか?』




『ーーーそれは月だけが見ていたーーー』






「〜〜〜なんでも!!」









*ーー慶雲院


「……で。何故呼び出されたかわかってるんだろうな?」
「……」
「……」
『……』


いつもにまして眉間にシワがよりあからさまに不機嫌そうな三蔵の前に正座するは、悟空と悟浄、そして葵である。3人はしばし無言で顔を見合わせた。




「…えーっと。 みんなでメシ食いに行こうとか……」
「女 紹介してくれるとか?」
『さて、なんだろう』



間髪入れずにどこからか出てきたハリセンのいい音が スパパパン と3人の頭をすべる。



「〜〜〜んなワケねぇだろッ このすっとこどっこいども!!!」
「すっとこどっこい≠チて神道の言葉なんですけどね」




ハリセンの音に続き三蔵様のツッコミが勢い良く入るとすぐさま八戒によるムダな雑学が横切る。




「…先週この慶雲院で大掃除があっただろう」
「ええ、僕と悟浄も駆り出されましたが」
「その時お前ら、宝物庫で何をしでかした…?」


三蔵からは見るからにいらだちを感じる。悟浄は何かに気づいたのか知らぬ振りをして口笛をふき、ワンテンポ遅れて悟空が声を発し、それに釣られるように葵も思い出したようだった。




「あ」
『?…あぁ、あれか!』





***
「ーーーーせあッ!!」
「たあッ!!」
「でりゃああ!!!」
『二人ともほんとにいい加減ないと後で怒られても俺は知らないからなーっ?』
「へッ どこ狙ってんだよ チビ猿!!」
「〜〜猿とかゆーなッ!!」
『聞いてないし…』
「おっと!」
「うぉッ!?」
『え…?』





バシィ!!がんッ
ガシャアン!





「!!」




ブワッ
ヒュンッヒュンッヒュン!!




『なッ…!?』
「うわッ!!?」
「……なんだァ?今の」
「うわーーッやべぇ、壊した!!」




***



「……だからさ」
『ちゃんとこーしてくっつけといたじゃんか』
「なぁ?」
「〜〜そういう問題じゃねぇッ!!!」
『…ていうかそもそも俺のせいではない』




どうやら葵はあまり関与していないらしいが三蔵にはそんな話も耳に入らない。…もし三蔵が活火山なら今この瞬間に大爆発を起こしているのだろうか…。




「悟浄、貴男いい歳して何やってるんですか……」
「ちっげーーよ!!」
「俺はコイツらに付き合って遊んでやってたんだっつーの!!」
「〜〜〜ずるッッ!!人のせいにすんよな!!悟浄が最初に仕掛けて来たんじゃん!?」
「どっかの猿が『掃除あきた〜』とか言うからだろ!?」
「サルサルゆーな、このエロエロエロエロエロ河童!!!」
『だからいい加減にしろよ…』
「〜〜やるかチビ猿!!」
「やらいでかッ!!」
「えーーと ちょっと待って下さい」
「あ゛?」
「え?…あれ 何だコレ」
「どっから出て来た!?」
『なんだそれ…』
「……やはり てめぇらが持っていたか…」
「え?」
「その三つが、この壺に封印されてた『宝物』だ。魔の力を宿すと言われ、悪しきものに利用されんようにこの寺院で保護されていたらしい」
「おい待てよ、三つってことは」
「葵も出せんのかー?」
『俺は見てただけでその壺に触ってすらな…い…あれ?』
「……はぁ」
『いや、ため息つかれても俺は無実だってば』



割られた三つのツボ(強引にテープで直された)を見て、再度三人の手にあるものを見て三蔵は深いため息をついた。自分は何もしていないと否定を入れるがもはやこの状況でどっちに転んでも大して変わらない…。



「武器…でしょうかね、コレ」
『武器ならご信用に俺はずーっとククリ持ってっからいらないけどな〜』
「意のままに形状を変えられる『如意棒』と鎖ガマを自在に操る事のできる『錫月杖』、それと刃の側面に龍が施された『青龍偃月刀』だそうだ」
「コレのどの辺が鎖ガマだっての?」



鎖の見当たらない変わった棍を振ればジャラジャラっと鎖が擦れる音と共に棍のなかから鎖が出てきた。


ヒュンッ
ギュンッ


その鎖は周りにいたものを切りつけていき間一髪で悟空が刃物の部分を避ける。


「どわぁッ!!!」
『っぶな…』
「〜〜〜てめェは俺らを刺身にでもする気か!!?」
「……ワリ」
「なるほど鎖ガマですねえ」



八戒はすこし興味を持ったようでジャラ…と鎖を持ち上げまじまじと見つめる。



「〜〜あ゛ッ」
『なんだようるせぇな』
「髪!!?俺の髪の毛ッ!!?」
「バッサリいっちゃいましたねぇ 後で切りそろえましょうか?」
「気にすんなよ髪の毛ぐらい どーーせすぐ伸びんだろ?」



なにか訳があってか髪を切るのを嫌がっていた悟空からすれば 髪の毛ぐらい とはいかないようでカチンと来たのかその顔は怒っていた。



「なんだよその言い方!?伸びろつってすぐ伸びるモンじゃねーんだぞ!?」


ドゴッ!と手に持っていた 如意棒 を床に叩きつけながらそういい放てば見る見るうちに棒は伸び、上を見上げれば屋根を貫通し青い空がこちらを覗いていた。




「…… 伸びましたね」
『あーあ。壊しちやった』
「ーーお前らここが誰の部屋だか言ってみろ」
「……ワリ」
「わぁったって、コレ返しゃあいんだろ!?」
『俺も別に要らないし、返すわ』
「……言っとくがな そいつは宿った持ち主が死ぬまで手放す事ができねぇんだよ」




「「『…え?』」」






「つまり、てめえらが今すぐ死んでそいつを宝物庫に返すか でなけりゃそいつをうまく使いこなせるようになるかの二択だ」
『ちょっ、、』
「…今日から特訓≠ナすね 悟空、悟浄、葵」

ビシッ

「お前特訓とか好きね、ホント……」
『いや、待てって俺も別に関係なくね!?』
「え?え!コレ俺の!?もらっていいの!!?」
「道連れだな」
『…お前ら覚えとけよ』
「え?何の話?」
「…つーか それ以前に部屋を直せ でなけりゃ死ね」
『直すのはお前ら2人でや…』
「だから、道連れだっての」
『はぁぁぁ!?』




悟浄のなぜか勝ち誇ったかのような笑みに押され仕方なく、仕方なく!手伝うことにした葵であった。どうやら彼は押しに弱いらしい。










「……なんか」
「頭軽くって変なカンジだ」
「軽くなったならいいじゃねぇか」
『似合ってるけどな』
「んーーー……」
「第一、何であんなに切んの嫌がってたんだよ」
「……あったかかったから」
『……』
「あの牢屋の中でさ……すげえ寒い時髪の毛を巻いてるとちょっとだけあったかかったんだ」




ーーー埋葬してきた過去がある







「……月ってよ 昼間でも見えてたんだな」
「え?」
「ハッ 当たり前か」
「……そんな当たり前の事すら 僕ら忘れていたのかもしれませんね」






逃げ出せない暗闇の中

月の光に背を向けながら



夜の深い所に埋めてきた苦いだけの『記憶』








「……今も寒いか?」








ーーーそれでも

青い空のに置き去りにされた月のように


ふと気付いて見上げる時が来たら
ーーーーーそれは













『思い出』

とでも呼ぶのだろうか





「……ん そーでもないや」









看ていたのは、月だけじゃなかったーーー



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