Starting Over(SW:池沢佳主馬)

世界チャンピオンが戻ってきた。
ヘッドホンを通して歓声が響き渡る。
ラブマシーンに負け、チャンピオンの座を奪われたキング・カズマが、また"キング"となって戻ってきたのだ。

「おかえりなさい」

マイクがオンになっているのも忘れ、思わず呟いた。
はっと口を押さえたが、どうせ周りに紛れて聞こえることはないだろう。もし聞こえていたとしても、他の喝采と同様に歯牙にもかけないだろうけれど。

「……あ」

一瞬、目が合った気がした。

…いやいや。自意識過剰だろ。
痛いファンか、私は。いや、ファンなのは否定しないけど。

脳内ツッコミを入れてる間にも、キング・カズマは大歓声を浴びながら、会場から出るのだろう外へ繋がる通路を進む。
私が立っている場所との距離が縮まり、そのまま前を通りすぎた時、




『ありがと』




「………え、」


………え…?え、何?何が、あった?

小さかった。集中していなければ聞こえなかっただろう声。ヘッドホンのお陰で辛うじて聞こえた、声。

「…嘘、でしょ」

画面には、他の人には聞こえないように、私だけに向けられた個人メッセージのログが残っていた。


 ■カズマ>ありがと。


うそ、だ。

心臓が激しく脈打ち、手が震える。
全身の力が抜けて、椅子から転げ落ちた。

「うるさいわよ!何暴れてるの!」

母親の叱咤の声など耳に入らない。

「痛い」

……夢じゃない。

我に返ってから、急激に上がった体温を感じて、腕で顔を覆った。

ああもう。当分熱は下がらなそうだ。








CreationDate:2015.10.18
書いてしまった。
主人公は佳主馬のクラスメイト設定。だけど接点はない。
小学生の時からOZ内で応援してました。
佳主馬はずっと見てくれてる事も、クラスメイトだという事も知っている。
主人公はまさか知られているとは思ってない。




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