04 腕を引かれながらしばらく歩くと、彼は一軒の家の前で止まり、ドアを開けて入った。 まだ腕を掴まれているため私も入ることになる。 彼は靴を脱いで、廊下に上がろうとするが、そこは踏ん張った。 私は靴を履いていなかったから土足にはならないが、それで外を走ったために泥だらけだ。 流石に汚すわけにはと思っていると、いいから、と先程より強い力で引っ張られた。 そしてそのまま浴室へと連れて行かれ、シャンプーやらトリートメントやらの説明をされる。 「ちゃんとあったまってきてね」 と言い、出て行こうとする彼を今度は逆に腕を掴んで止めた。 私より君の方が、 「俺は男だから大丈夫。先にオネーサン。それともこのまま拒否するなら無理矢理剥いで一緒に入るけど?」 口に出す前に遮られたセリフに、なにを!と心の中で動揺しながら言えた言葉は 「ひ、とりで、はいる…」 だけだった。 彼は残念、と一言残し、ちゃんとあったまってね、と念を押して出て行く。 冷えた身体にシャワーをかけながら、その温かさにまた涙が出そうだった。 CreationDate:2015.06.04 [ 4/4 ] [Put a Bookmark] 戻る |